マレーシア映画『ラ・ルナ』

東京国際映画祭でマレーシア映画『ラ・ルナ』を観た。感想を尋ねられたけれど、その場では簡潔にうまく答えられない気がした。映画の本筋と関係ない感想ばかりになってしまって映画を愉しんだ人の気持ちに水を差すといけないと思ったのと、感想を一通り説明…

『まだまだ熱中!フィリピン映画』

よしだまさしさんから『まだまだ熱中!フィリピン映画』を送っていただいた。2020年7月発行の『熱中!フィリピン映画』の続編。『熱中!』で多くの作品を紹介していたけれど、語り切れなかったところがまだまだあるはずなのでぜひ続編を、と思っていたらこん…

日本語吹き替え版『タレンタイム』

Kawasakiしんゆり映画祭で『タレンタイム』を観た。バリアフリー上映で、副音声のイヤホンガイドがあった。登場人物ごとに違う人が声をあてていて、日本語吹き替え版のようで新鮮だった。背景説明の部分では場面や登場人物の様子を簡潔に説明しているけれど…

『香港と日本 記憶・表象・アイデンティティ』

『淪落の人』のことを考えていたら、『香港と日本 記憶・表象・アイデンティティ』(銭俊華、ちくま新書)に出あった。 香港出身で日本の大学院で学んでいる著者は、遊び心に溢れているようで、どうすれば読者を飽きさせずに最後まで読んでもらえて、あまり…

『インディペンデント映画の逆襲 フィリピン映画と自画像の構築』

『インディペンデント映画の逆襲 フィリピン映画と自画像の構築』(鈴木勉、風響社)を読んだ。2005年に始まったシネマラヤ映画祭の上映作品を中心に、フィリピンのインディペンデント映画を一気に紹介している。 映画の本は、読者が知らない映画の話がたく…

『熱帯雨』

東京Filmexで映画『熱帯雨』を観た。 マレーシア華人で、シンガポール人男性と結婚して、シンガポールの高校で華語を教えながら、家庭では半身不随の義父の世話をして、不妊治療をしつつ夫との冷えた関係を修復しようとするリン。理数系の教師はお金に余裕が…

ジャカルタ深読み日記

ヤスミンの本を書いて、いろいろな場所でヤスミンの話をする機会をいただいて、久しぶりにこの場に戻ってきたらデザインがすっかり変わっていた。改めて見てみると、デザインよりも「ジャカルタ深読み日記」というタイトルが気になる。 10年前にジャカルタに…

ヤスミン・アフマド本・続編とヤスミン記念館別館

マレーシアの故ヤスミン・アフマド監督の遺族と元同僚が中心になってヤスミン監督の思い出を語る本「Yasmin How You Know?」が出版されて6年が経った。日本語に翻訳してと言われて、そのうちにと言っているうちにヤスミン本の第二弾が刊行されることになった…

『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民・・・』

話題としては前回の災後の話と2つ前のインドネシアと東ティモールの映画からの繋がりで、災いで予期せずに身近な人を失ったときにどうやって弔うかという話。 バリ島爆弾テロを扱ったインドネシア映画『天国への長い道』(『楽園への長い道』の方がいいかも…

災後7年目の物語『海を駆ける』

今週末から深田晃司監督の『海を駆ける』が公開される。2004年12月のスマトラ島沖地震・津波(インド洋津波)の最大の被災地で、30年続いていた内戦が津波被災を契機に終わったアチェ州の州都バンダ・アチェとその沖のウェー島(サバン)が舞台。 最大の謎は…

インドネシアと東ティモールの映画と「海を駆ける」

インドネシアと東ティモールの映画を題材にした上映会とシンポジウムを企画中。開催1か月前になり、もうお知らせを始めてもおかしくないのだけれど、最後のところでちょっと止まっているので半分だけ告知。 5月18日(金)の午後2時頃から8時ごろまで、会場は…

『クソ野郎と美しき世界』

『クソ野郎と美しき世界』を観た。上映している劇場数はそれほど多くなくて、しかも気を抜いているとすぐに満席になってしまうので、ようやく観ることができた。稲垣吾郎シネマナビ!で『タレンタイム』を紹介してくれた一宿一飯の恩。 自分が大切にしている…

インドネシア映画『Turah』

インドネシアで劇場公開中のインドネシア映画『Turah』を観た。 『聖なる踊子』で助監督をつとめたウィスヌ(Wicaksono Wisnu Legowo)の長編初監督作。プロデューサーは『聖なる踊子』『黄金上秘聞』『チャドチャド 研修医のトホホ日記』などのイファ・イス…

インドネシア映画『Cek Toko Sebelah』

インドネシアで劇場公開中のインドネシア映画『The Underdogs』を観て、エルネストつながりということでDVDでインドネシア映画『Cek Toko Sebelah』を観た。 タイトルの「Cek Toko Sebelah」の文字通りの意味は「隣の店を確かめろ」(隣の店と比べてみろ)だ…

インド洋津波から12年のアチェ

数か月ぶりのアチェ訪問。前回の滞在は会議ばかりで街に出る時間があまりとれなかったけれど、今回は短い滞在ながらも郊外を含めて外に出かける時間が少し取れた。 2004年12月のインド洋津波から13年目を迎えようとしているバンダ・アチェでは、津波の被害と…

インドネシア映画『Rafathar』

インドネシアで劇場公開中の映画『Rafathar』を観た。超能力を持ったスーパー赤ちゃんを誘拐しようとした2人組がさんざんな目に遭うコメディ。 タイトルのラファタル(Rafathar)は主役の赤ちゃんの役名で、それを演じた赤ちゃんの本名でもある。両親は役者…

インドネシア映画『Banda』

インドネシア映画『Banda: The Dark Forgotten Trail』を観た。マルク(モルッカ)諸島のバンダ島についてのドキュメンタリー。 前半は、スペインとポルトガルの世界分割の話から香料の話へ。 後半はそこに住んでいた人たちの話。オランダ植民地期の1920年代…

サンシャワー展(3)

サンシャワー展では映像作品がよかった。 特に「ヌサンタラ」は思わぬ掘り出し物だった。6本の短編を全部観たら1時間以上かかった。内容がよかったので1時間でも2時間でもいいのだけれど、これ以外の作品も含めて、映像作品は何分ぐらいなのかが事前にわかる…

サンシャワー展(2)

手間暇かけて作ったものを手間暇かけて選んで並べたのだから、個別の作品にも展示全体にもそれぞれ意味が宿っているはずで、それを考えるのが展示会に行く楽しみだ。サンシャワー展では、多少の土地勘があるマレーシア、シンガポール、インドネシア、そして…

サンシャワー展(1)

少し前になるが、「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」(サンシャワー展)を見てきた。 サンシャワーは天気雨のこと。ホー・ユーハン風にいくなら「太陽雨」と書いてレインドッグと読ませるだろうけど、サンシャワーと書くと明る…

シンガポールのタレンタイム映画『Wonder Boy』

マレーシアとシンガポールで行われている芸能コンテストの「タレンタイム」は、もともと1949年にシンガポールでラジオ番組として始まり、1963年にテレビ放送が始まるとテレビ番組になった。タレンタイム全盛期の1950年代から1970年代にかけて、ラジオ/テレ…

インドネシア映画『Surga yang tak dirindukan』

『Surga yang tak dirindukan』を観た。ジャカルタ市内のDVD屋さんが壊滅状態で、ようやく見つけた1枚がこれ。 数日前に観た同タイトルの2の前編。こちらが作られたのが2015年、2が公開されたのが2016年12月から2017年にかけて。 先に2を観てから1を観…

カフェモンド

アジア映画のおもしろさは混血性と越境性にあって、その2つをあわせた混成性をキーワードにしてアジア映画を楽しもうというのが混成アジア映画の考え方だ。この考え方の源流の1つ(というか1人)とジャカルタで会って話を伺う機会があった。 インドネシア…

インドネシア映画『TEN: The Secret Mission』

7月27日劇場公開のインドネシア映画『TEN: The Secret Mission』を観た。特殊部隊の秘密作戦もので、武装して小島に立て籠もった犯行グループから人質を奪還するため訓練を受けた特殊部隊10人が島に潜入して、犯行グループと死闘を繰り広げて人質を解放する…

インドネシア映画『珈琲哲學2』

ジャカルタのブロックMスクエアで『珈琲哲學2』を観た。映画の後は隣のフィロソフィ・コピへ。『珈琲哲學』の1(というか前作)がそろそろ日本で劇場公開されるタイミングで、2もいずれ日本で劇場公開されるかもしれないと思うので、これから1を観る人や…

ジャカルタで『いなべ』

Kinosaurusで深田晃司監督の『いなべ』を観た。ジャカルタの国際交流基金の企画。 冒頭でいきなり養豚シーンが出てくる。これをインドネシアで上映するのはさすがKinosaurusだと思って、いなべ市の山を背景に子豚がとことこ歩いてる場面でも出てきたらまるで…

インドネシアのイスラム恋愛映画「Surga yang tak dirindukan 2」

ガルーダ・インドネシアの機内上映でインドネシア映画の「Surga yang tak dirindukan 2」を観た。 2015年に公開された話題作の続編。人気作品の続編が失速するという話はよくあるけれど、これは例外。 続編だけれど、1作目を観ていなくても全く問題ない。も…

タイ特撮映画『プラロットとメーリー』

毎週楽しみにしていた『怪獣倶楽部』が終わってしまった。第3話のゼットンとの攻防も見ごたえがあったけど、最終回のアンヌ隊員からのメッセージもしっかり受け止めた。 今期は『ウルトラセブン』もあって特撮の濃度が高い日々を送っているが、特撮がらみで…

『タレンタイム』のDVDとUrbanscapes

お茶をいただきながら先日のマレーシア行きを思い出す。 忘れないうちにいくつかメモ。 はじめに、最近よく尋ねられる『タレンタイム』のDVDについて。前にも書いたことがあるけれど、しばらく前まで、クアラルンプールのSpeedyを3、4軒まわると、『細い目…

ガネーシュの「結婚」

『タレンタイム』について熱く語る人たちと話す機会があった。『タレンタイム』にはまだ掘り下げられるところがたくさんあり、特にインド系の文化や社会への理解が深まれば『タレンタイム』への理解ももっと深まると再確認。ヴィマラとマヘシュたちの関係な…