ユナ「Penakut」

7月に入ったと思ったら、その日その日を暮しているうちに9月が終わってしまった。この間に、今となっては年に数日しかタイトルが中身を指さなくなったこのページの名実が合致する数少ない機会もあったけれど、それについて書きとめておく余裕もなく日々が過ぎていき、ようやく仕事上のカレンダーが実生活のカレンダーに追いついた。こんなときに東野圭吾の『マスカレード・ホテル』を読むと、本筋と全然関係ないところで総支配人の話に泣けてくる。


この2か月のできごとを思い出した順にダイジェスト版で書き留めておくことにしよう。
『細い目』のオーキッドことシャリファ・アマニが今一番おすすめのマレーシアの歌手ということで紹介してくれたのがユナ(Yuna)。デビュー時は「トゥドン(スカーフ)を被ってギターを弾く娘」と驚きで迎えられたらしい。この夏の私の仕事のお伴はユナちゃんのアルバム「Decorate」、特に「Penakut」だった。
Penakutは、歌詞は全部マレー語だけれど、文の構造や使っている単語は比較的簡単なので、マレー語の初学者でも十分に意味がわかるはず。念のために書いておくと、人称代名詞はどれも省略形が使われていて、自分のことはku、相手のことはkauとmu、そして第三者はnyaを使っている。はじめ聞いたときはkauもmuも同じ「あなた」で韻を揃えるために使い分けているのかなぐらいに思っていたのだけれど、何度か聞いているうちに、kauは歌っている人が想いを寄せている具体的な相手を指しているのに対して、muの方は一般的な「君」「あなた」なのだと気づいた。そう思って聞き直してみると、好きになった男性に別の女性がいたので自分は手を引くという最初の印象とはちょっと違う内容に聞こえてくる。タイトルの「Penakut」(怖がり)とはそういう意味かと。


ユナちゃんは別の曲では明らかに歌詞をインドネシア語にしているものもあって、もしかしたらインドネシア進出も狙っているのかもしれない。シティ・ヌルハリザに次いでインドネシアで一般のCD屋に並ぶマレーシア人歌手になるかも。


ところで、ユナちゃんのせいなのかわからないけれど、このところインドネシアやマレーシアで若い女性が山盛りにしたスカーフの被り方をしているのが目立った。断食月だったからいつもより念入りにおめかししているということかもしれないけれど、スカーフの新しい被り方が流行っているのかもしれない。というのも、インターネット上で若いマレー人女性がスカーフのクールな被り方を披露している動画がたくさんあるから。「cara pakai tudung」あたりで検索するとたくさん出てくる。マレーシア以外のムスリム女性もやっているようなので、もしかしたらユナちゃんとは直接関係ないかもしれないが、いずれにしろ、彼女たちがスカーフを自己アピールの手段として被っているということがよくわかって興味深い。


被り物の話を書いたのは『セカンドバージン』を観たから。それについては別の機会に。