年度末

年度替りには現地スタッフの契約更新という仕事もある。初めての経験なので悩んだのが昇給率。前任者の記録を見てみると、消費者物価の上昇率や最低賃金の上昇率など、それぞれ自分の信じる根拠を挙げて昇給率を算出している。しかも、働き具合によって現地スタッフごとに昇給率を変える人もいれば、全員同じ率にしている人もいる。
駐在員がどう決めてもいいけれど、そのかわりそれなりの根拠を示せということらしい。決めるのは本社だけれど、本社決定を一方的に現場に下ろすと良好な関係が保てなくなるおそれがあるので、まずは駐在員が昇給率を現地スタッフに示して、理解を得た上で本社に提案して決裁してもらうという運びらしい。


この数日、何かというと数年前に駐在していた駐在員のNさんのことが話題に上り、「Nさんはいい人でした」とみんなしきりに言っていた。私はNさんのことを直接知らないのだけれど、でもよっぽどいい人だったんだろうなと思っていたら、どうやらNさんのときに昇給率が十数パーセントだったらしく、契約更新の時期になるたびに思い出される伝説の人になっているようだ。
そうはいっても、Nさんが十数パーセント昇給させたのはそのときの物価上昇率最低賃金の上昇率がそれだけ高かったからで、給料の額面が増えたからといってただちに生活が楽になるわけではない。でも、どうやら給料収入と物価は切り離されて捉えられているらしい。給料がいくら上がるかは職場との関係の話。ガソリンや生活必需品の値段が上がるのは政府のせい。それ以外のものの値段が上がるのは外国や企業や商人のせい。だから、給料がどれだけ上がるかは、それだけ見て一喜一憂できる。まあ、自分のことを振り返ってみれば同じようなものなんだけれど。


昇給率はこちらの提案でいちおう納得してくれた様子。現地スタッフのあいだで差をつけるかは、これがマレーシアだったら迷うことなくそれぞれ変えるところだけれど、インドネシアなのでみんな同じにしてみた。