ミャンマーのサイクロン被害

ミャンマービルマ)ではサイクロンでかなり大きな被害が出ていることが報じられている。

募金もいいけれど情報を

関係する某学会では、さっそく募金活動を行う可能性を検討しているらしい。学会として何かしないわけにはいかないんだろうけれど、でも学会が募金してどうするんだろうと思う。何の目的で誰にお金を渡すかについてちゃんとビジョンはあるんだろうか。
軍事政権のミャンマーでは、被災者支援のつもりで募金しても、渡す相手を間違えると支援のために使われない可能性もあるらしい。学会というのは現地社会に詳しい研究者集団のはず。そうであれば、その専門性を活かして情報提供してほしい。
被災地はもともとどういう社会で、被災によってどういう状況になっていて、被災者は何を必要としていて、それはどこで手に入り、それを被災地に届けることをできるのは誰で、それを手助けするためには誰に何を託せばいいのか、といった情報だ。
お金を出すくらいの関わりしかできないけれどお金を出すくらいの関わりはできる、という立場からすれば、そういう情報がわかれば安心して募金できる。そうでないと、アチェ津波のときのように日赤やユニセフなど一部の団体に募金が極端に集中することが繰り返されることになる。

東南アジア研究者の情報提供

サイクロン被害に関する情報提供ですばやく対応した人たちに、京都大学東南アジア研究所の古市剛久さんを世話人とする研究者たちがいる。
5月9日には関連情報をウェブ上で公開している。外部サイトへのリンクを含めて基本的な情報が一通り揃っているし、視覚的に訴える情報を中心に集めているのもわかりやすい。
被災直後にここまで立ち上げた判断と行動力を高く評価して、大いに参照させていただくことにする。これから情報がさらに充実していくことに期待する一方で、少数の人に作業や責任が集中することによる「二次被災」に陥らないように、まわりにはしっかりサポートしてもらいたい。
東南アジア地域研究研究所

ブログで紹介するのも支援の一歩

災害対応のインターネット上の情報発信で重要なのは信頼性と速報性だ。誰にむけて発信するかにもよるけれど、人道支援団体に利用してもらうことには意義があるはず。ところが、国内の大手の人道支援団体の関係者によれば、国際機関や外務省が出している情報なら安心だけれど、個人が発信する情報は信頼度が判断できないので参照しないのだとか。学会や大学・研究所のサイトに載っていれば考慮するとのこと。支援団体によって違うだろうけれど、活動資金の提供者に対する説明責任を考えると、情報の正しさよりも情報源の信頼性を選ぶ傾向は確かにあるらしい。
でも、学会や大学・研究所などの一般サイトに載せると、検索に引っかかるようになるまで時間がかかるという問題がある。googleで数日、yahooだと数週間かかることもある。しかも、世代にもよるだろうけれど、アチェ津波やジャワの地震ではgoogleよりもyahooで情報を検索する人のほうが圧倒的に多かった。せっかく情報を発信しても、検索に引っかかる頃には緊急支援の段階が終わっていたということにもなりかねない。
その点、ブログは掲載したとたんに検索に引っかかるしくみになっている。いろいろなブログが学会や大学・研究所のサイトをリンクつきで紹介することは、検索に引っかかるようになるまでに時間がかかるサイトを検索の網の中に紹介するという意味で、災害対応などの緊急時にはかなり効果がある。
あるいは、学会のウェブサイトに「緊急情報」のページを常設させておいて、関連情報はそこからリンクをはるようにしておくと、突発的に何か起こったときはとりあえずそのページを見に行けばいいということになる。学会はむしろこういう方面でがんばるべきだと思うのだけれど。地域研究コンソーシアムも同様の試みをしているけれど、連休に入ったタイミングのために東南アジア研究所のサイクロン被害に関するページの情報はまだ掲載されていない。
http://www.jcas.jp/kinkyuu.html

募金するならマーシー・マレーシアへ

もう1つ、サイクロン被害支援で私が注目しているのはマレーシアのマーシー。すでにメンバー2人をヤンゴンに派遣して被害状況を調査しているらしい。ミャンマーには入国できないわけじゃあないのか。
404 Not Found | マレーシアナビ!
人道支援団体のマーシーといえばアメリカのものが有名だが、マーシー・マレーシアはマレーシアの地元NGOで、アメリカのマーシーとはまったく関係ない。たまたま名前が同じになっただけ。貧困、災害、紛争などに対する支援活動を行っている。
2004年にスマトラ沖地震津波アチェが壊滅的な被害を受け、しかし情報がないこともあって多くの支援団体がまだアチェ入りしていなかった被災直後の時期、真っ先に西アチェの被災地に入って支援活動を行った。そこにCNNがやってきて現場の様子をテレビで流したところ、マーシーががんばっていると思った全米の人々がアメリカのマーシー義捐金を送り、そのせいもあってアメリカのマーシーアチェでの支援活動に参加した。マーシー・マレーシアの担当者は、アメリカのマーシーからは感謝状をもらったけれどお金はぜんぜんもらってないのよ、と笑いながら教えてくれた。
ということで、「ミャンマーのサイクロン被害で募金するならマーシー・マレーシアに」と言いたい。
http://www.mercy.org.my/main/index.php