マレーシアのインド人映画

クチンで開かれた学会に参加していたら、ディーパク・クマラン・メノン監督を交えて、監督の「Chemman Chaalai」(邦題:砂利の道)と「Chalangai」(邦題:ダンシング・ベル)を観る機会があった。夜7時半から始まって、10分の休憩をはさんで映画を2本観て、その後のQ&Aセッションが盛り上がりすぎて長びき、会が終わったのは夜の11時過ぎだった。そのあともコーヒーショップに場所をかえて映画の感想を語り合った人たちもいた。
2つともマレーシアのインド系社会を描いた映画。マレーシア内外の多くの人の関心を集めた今年3月の総選挙で重要な役割を果たしたインド系社会をどう理解すればよいのかという人々のニーズとうまく合致した形となった。
「砂利の道」の方はゴム農園が舞台で、なんとかしてゴム農園から外の世界に出ていきたい(でも誰かが1人だけ外の世界に行くのはいやだ)と思っている人々の話。そこでは、女の子は中学か高校を出れば十分で、その後は働いて家族を助けるべきだという考え方が支配的だけれど、主人公(高校生の女の子)は高校での成績が跳び抜けてよいために先生に大学進学を勧められ、そのことが家族や農園での人間関係に影響を与えていく。
「ダンシング・ベル」は、クアラルンプール市内のインド人地区としてよく知られているブリックフィールドに住むインド人家族の話。物語上、2つの作品のつながりはないけれど、「砂利の道」で教育の道で農園の外に出て行こうとした人たちのなかでうまくいった人が都会に出てどういう暮らしをしているかという見方をすることもできる。悪人ではないのだけれど、機会に恵まれずにめぐりめぐって犯罪に手を染めてしまうインド人などが登場する。
この2つの映画を観ただけでマレーシアのインド系社会がわかったとはとても言えないけれど、少なくともブリックフィールドで見かけるインド系の人たちに対して以前よりも親近感がわくようになった。