コーヒーショップまわり

マレーシアの政治の話の続き。
マレーシアの国会では、数の上では与野党が85対82、それに30と25がぶら下がっているという話だった。では、数字はそうだとして、マレーシアの人々の意識はどうなのか。特に、85対82という状況に置かれている半島部のマレーシア人の意識はどうか。
与党連合BNの長期政権にお仕置きをしたいとは思っていても、万年野党で「何でも反対党」であるDAPやPASの連合体である野党連合PRに政権を任せることはできないと思っているのではないか。アンワールもかつて政権にいたときは強権的なことをしていたので、特に華人有権者にはアンワールを信用しきれないところがあるのではないか。今回の選挙では一時的にBNへの批判票を投じたけれど、政権交代まで行くのは行きすぎだと思っている人が大半ではないか。こんな印象を持っていた。
これをちゃんと調べるには、大がかりな世論調査をするか、政治家などの有力者に話を聞くかするのだろうけれど、いずれもカネやコネが必要で、誰にでもできることではない。それに、どの方法も一長一短あって、どうせ一面しかわからない。政治家に会うことはできるかもしれないけれど、よくわからない外国の若者が遊び半分で訪ねてきたと思われたら適当な話をされるだけかもしれないし、あえて極端な話をしてそれが外国で報じらて、それを外圧にして国内の状況を変えようという思惑に乗せられてしまうかもしれない。
どうせ一面しかわからないのならば楽しい方法がいいということで、コーヒーショップまわりをすることにした。もちろんこの方法にも限界はある。実際に会って話を聞いた限られた人の話に大きく影響される。そもそもコーヒーショップに来る人と来ない人がいるので、話を聞くのは暇な男たちばかりになる。でもまあ、どの方法をとってもその手の限界は付きまとうのだから、そういった限界があることを意識した上で、コーヒーショップまわりをするのも意味がないわけではないだろう。もともとここは深読みを書く場だし。


さて、そういうわけでコーヒーを何杯か飲んだ印象論でしかないけれど、半島部でのBNへの反発は予想以上に厳しく、かなりのものだと感じた。ちょっとお仕置きしてやるという程度ではなく、性格を変えるなら根本的に変えろ、そうでなければPR政権でいってみる、という雰囲気を強く感じた。PRに問題もないわけではないけれど、3月からこれまでの野党州の州行政にも大きな問題はないようなので、とりあえずPRにやらせてみて、大きな問題があればまた変えればいいと思っている人が多いような印象を受けた。
もちろん、田舎の方に行くと根強いBN支持があったりするのだろうけれど、これだって政府支持であってBN支持とは限らないので、政権が交代したあとでもBNを支持し続けるとは限らない。


そうなると、ではいつごろ政権交代が起こるかという質問が出る。政治家たちはそれぞれ先行きが全く見えない状態で生き残りをかけて必死に動いているので、それを見通すのは不可能な話だ。それでも何か言わなければならない立場に置かれることもある。ここでは、完全なあてずっぽうにならない範囲で見通しを書いてみよう。
政権交代を起こすにはサバ・サラワクでの大幅な移籍が必要になる。サバ・サラワクにはそのつもりがあるが、半島部で勢力が逆転するまでは動きにくい。半島部で補欠選挙があったり、党役員選挙で負けた勢力が離党してPRにくっついたりというシナリオはありうるだろうけれど、いつ頃までにそれが起こるかの予測は難しい。
サバ・サラワクで半島部での勢力逆転を待たずに大幅な移籍がありうるとしたら、2年後のサラワクの州議会選挙が1つのきっかけになる可能性がある。サラワクは、これまで長くタイブ州首相のもとで政権がまとめられてきた。マハティールにもたとえられるタイブが押さえている限りはいいが、タイブもそろそろ引退だ。そうなると、後継者に選ばれなかった勢力がPRとくっついて勢力分布を変えようとするかもしれない。ということで、今後しばらく、サラワクの各政党の後継者選びがどう落ち着くかが注目される。