マレーシアで見つけた本

透視308(紀伝財、Seashore、2009)
308とはマレーシアの総選挙で与党連合・国民戦線(BN)が大きく後退した2008年3月8日のこと。マレーシア社会のいろいろな分野での308の意味や影響についてのエッセイを集めて華語訳したもの。サバ、サラワク、ペナンなどの地域別の話題や司法制度、メディア、新経済政策、汚職などのイシュー別の話題が盛り込まれていて、2008年3月以降のマレーシアの様子を概観するのにとても便利。


Political Islam in Southeast Asia (Gordon P. Means, SIRD, 2009)
インドネシアとマレーシアを中心に東南アジアの政治的イスラムについて歴史から現在までまとめたもの。既存の研究をうまく整理しており、しかもマレーシアでは2008年の総選挙後の状況も触れられているなど最近の状況までカバーしているので、この話題についての教科書として最適。


Masking and Unmaking the Asylum: Leprosy and Modernity in Singapore and Malaysia. (Loh Kah Sng, SIRD, 2009)
植民地時代と独立後のマレーシアとシンガポールにおけるハンセン病患者収容所について。近代、科学、開発などの言葉でハンセン病患者の社会からの隔離が正当化され、収容施設に隔離された。その一方で、収容施設で患者たちは家族を作り、団体活動に参加し、宗教や慣習に関わる活動を行うなどして、隔離された範囲でありながらもコミュニティのなかに自分を位置づけた暮らしを手に入れようとしてきた。


Murtad Jangan Pandang Sebelah Mata (Ann Wan Seng, Mustread, 2009)
「Murtad」は(イスラム教の)「棄教」。マレー人ムスリムが他の宗教に改宗することが認められていないマレーシアで、イスラム教からの改宗を求める裁判が最近増えているが、これに対してイスラム教の見地から諌めたもの。よく知られたリナ・ジョイ裁判のほかにいくつかの事例を取り上げて論じている。また、マレー人ムスリムの話だけでなく、「saudara baru」(新しい兄弟)と呼ばれる華人改宗者の「棄教」問題についても触れている。著者は1968年にスランゴールで生まれた華人で、1996年にイスラム教徒になった。マレーシア・ムスリム華人協会の事務局長などを務めている人物。


New Malaysian Essays 2 (Amir Muhammad (ed.), Matahari Books, 2009)
変わりつつあるマレーシア社会を積極的に捉えたエッセイ集。昨年刊行の第一弾に続く第二弾。


Readings on Women and Development in Malaysia (Jamilah Arrifin (ed.), MPH, 2009)
1994年に出された同じタイトルのリーディングスの続編。