サバで見つけた本

Indigenous Ethnic Communities of Sabah: The Kadazandusun. (Herman J. Luping, Ministry of Information, Communications and Culture Malaysia, 2009)
1950年代のカダザン・ナショナリストとして著名なヘルマン・ルピンによるカダザンドゥスン人の起源と行く末についての本。非売品。1950年代にカダザン・ナショナリズムの担い手となったプナンパン地方のカダザン人を華人とのプラナカンと呼んでいる点が注目される。


Music of the Chinese in Sabah: The Keyboard Culture (Cadid Wong Tze Wan, Opus Publications, 2009)
サバのキーボード音楽の歴史を華人と教会に焦点を当てて紹介したもの。サバの教会は歌って踊るものが多く、キーボード演奏は重要な役割を担っている。なお、サバ華人に関する本を毎年のように出版している歴史学者のDanny Wong Tze Kenとは血縁関係が全くない他人(ただし友人)だそうなので、私のように間違えてDanny Wong氏に「今度は音楽の本を出したんだね」などと言わないようご注意を。


Inland People of Sabah: Before, During and After Nunuk Ragang (P.S. Shim, Borneo Cultural Heritage Publisher, 2007)
カダザンドゥスン系住民の伝承上の出身地である巨木ヌヌック・ラガンからサバ各地に移住していき、現在の各グループが作られたという伝承をまとめたもの。著者は1942年クランタン生まれで、サバの森林局で長く勤めた経験を持つ。民族伝承と森林生態を組み合わせてカダザンドゥスン系の起源神話を読み解く試み。


Perubahan Sosioekonomi dan Pentadbiran: Masyarakat Peribumi Sabah (1881-1963) (Siti Aidah Hj. Lokin, Penerbit UMS, 2007)
イギリス統治時代のサバ原住民の社会経済状況について。この分野で知らない人のないはずのサビハ・オスマンの博士論文と構成も内容もほとんど同じなのでびっくり。1950年代については独自インタビューなどで情報を補っていて、K.バリやAGABAについて新しい情報がいくつか出ている点は買い。


Sejarah dan Budaya Bugis di Tawau, Sabah (Suraya Sintang, Persatuan Kebajikan Bugis Sabah, 2007)
この数年、サバで急速に勢力を伸ばしているブギス系住民について。イギリス統治下のスラウェシからの移民の話や、タワウで定着するに当たっての華人との関係作りなどの話などが一通り書かれている。日本では伊藤真氏が聞き取り調査によってかなりの部分を明らかにしているので多くは読んだことがある話だが、それを地元のブギス協会が公式見解として書いている。