新年度

年度末の処理もだいたい終わり、ようやく一区切りという気になってきた。
身体の方は、なかなか一区切りとはならないけれど、大きな問題は解消されたと思うことにしよう。
昨年暮れから体調を崩して、入院だの検査だのという日々を送ることになった。この間、メールへの対応も最低レベルに抑えたため、未処理分が2000通ぐらい溜まってしまい、時機を逸して返信できないままになったものもある。現実世界で私からの返事がないなと思った人は、そのような事情なので、すみませんがもう一度連絡してください。

この間にあったことをいくつか。

大阪アジアン映画祭は『ラブリーマン』しか観られなかった。1つの作品としてとてもよくできていると思うのだけれど、それと別に、観ているといろいろな場面でヤスミン監督を思い出してしまう。なんでもヤスミンヤスミンと言い続けるのはよくないとも思うが、でも、『タレンタイム』をベースに『グブラ』をメインに据えて『ムクシン』をトッピングして全体にホー・ユーハンをまぶした作品だったという印象が頭から離れない。

映画と言えば、『ウルトラマンサーガ』はウルトラシリーズが震災後の状況に真面目に向き合った作品。AKBの地球防衛軍と聞いたときにはどうなることかと思ったけれど、うまくまとまってよかった。ちょっとコミカルなウルトラマンゼロも、メッセージを伝えたいのが子どもたちだと考えれば理解できる。内山まもる先生、お亡くなりになっていた。『ザ・ウルトラマン』が好きだった。ご冥福をお祈りします。

震災後の状況に向き合った作品と言えば、東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』。震災は直接の物語とほとんど関係ないけれど、「自分は生き残ってしまった」という思いを抱きながら、津波で亡くなった人たちのことを意識してこれからの人生を全うしていこうとするアチェの人々の思いと重なって見えた。

東野圭吾と言えば『歪笑小説』。小説を書く人と書かせる人の両方の舞台裏を描くことで小説の世界の表と裏を見せてくれる。大学教員は研究だけしていると思っている人がいるかもしれないけれど、学会でのシンポジウム企画や学会誌の編集や学会賞などなどを思い浮かべれば、実は研究者業界にも表舞台で研究する側と舞台裏で企画・促進する側がいることがわかる。小説と違うのは、小説だと書く人と書かせる人の分業がはっきりしているけれど、研究の世界ではシンポジウムや学会誌などを企画するのも研究者であること。一人二役はいろいろとたいへんだったりする。それはそうと、『歪笑小説』で駆け出しの作家の作品をきちんと読んで感想を伝えた上で、でも自分の次回作はもっと面白いよというベテラン作家の姿が強く印象に残っている。ベテランになっても地道な勉強を怠らず、常に最善のものを作ろうとする意欲を忘れない姿。研究者もこうでありたい。