命に終わりあり 能には果てあるべからず

20年ほど前から家族づきあいをしてくださった方をお見送りした。本業とは別に、還暦を迎えてから能面を彫りはじめ、仲間を集めて狂言もはじめて、地元の人たちに伝統文化を伝えようと尽力した人だった。
最後の数日間に二人だけで話す時間があり、いま編集している雑誌のアジア映画特集号の話をすると、関連して能の話を紹介していただいた。来年三月に雑誌が出たら読んでいただくという約束はかなわないものとなったが、「伝えていく」ことの意味と方法を改めて考えていくことで、これまでにいただいたことを生かしていきたい。