メダン華人

ドリアンケーキ

華人の話題が続くけれど、今日はメダンへ。アチェへの行き帰りにときどき立ち寄っていたけれど、数日間滞在するのは4年ぶり。
空港を出たらいきなりペトロナスのガソリンスタンドが目に入った。何でこんなところにマレーシアのガソリンスタンドがあるのかと驚いていると、今年1月から新しいガソリンスタンドを作る認可が下りなくなるということで去年のうちに駆け込みでガソリンスタンドがたくさん作られ、メダン市内にガソリンスタンドが十数か所増えたのだそうだ。ガソリンスタンドっていうのは駆け込みで作るものなのかという疑問はともかく、その1つがマレーシアの国営石油会社ペトロナスのガソリンスタンドだったというわけだ。
メダンの人たちはペトロナスのガソリンは高いからとなるべく行かないようにしているらしいけれど、メダンの空港に降り立って「さあ異国に来たぞ」と気を引き締めているマレーシア人にとって、空港を出てすぐにマレーシアのガソリンスタンドがあるのはとても大きな心の支えになるのではないか、などとマレーシア人ではないけれど思ってしまった。


メダンを案内してくれたのはメダン華人の友人たち。話題はどうしても陰暦正月に向かう。私がメダンでの長期滞在を終えてから4年のあいだ、インドネシアでは中華文化に対する政策が大転換を遂げていて、それをスハルト体制崩壊からの10年間を振り返りながら話してくれた。
スハルト時代には中華文化は一切禁じられていたけれど、メガワティ大統領になって学校で中国語が教えられるようになった。テレビはメトロTV局ができて中国語のニュース番組を流すようになり、2、3年前からは他の局でも陰暦正月の特別番組を放送するようになった。最近ではテレビで華語の歌唱コンテストまで放送するようになったけれど、ジャカルタ華人の華語はインドネシアなまりが強くて下手だとメダン華人は噂しているんだとか。
メダン華人の最近のテレビの関心はDaai TV(大愛テレビ)。ここでも何度か書いている台湾発の仏教系慈善団体である慈済(ツーチー)の系列のテレビ局で、またしてもツーチーかという感じ。どこまで行っても結局はお釈迦さまの掌のあいだでしかなかったのかという気になる。
Daaiテレビは2004年の津波の後にメダンに入ってきたテレビ局で、台湾のドラマが福建語で見られるので福建系が多いメダン華人にはお気に入りだそうだ。
中華文化といえば、スハルト後は獅子舞もおおっぴらに行えるようになった。華人だけでなくプリブミのインドネシア人も獅子舞団を組んで家々をまわっているそうで、中華文化がずいぶん受け入れられているんだねと言うと、「あれは中華文化を受け入れているんじゃなくてビジネスだから。獅子舞は家をまわって祝儀をもらうビジネス。」とシビアな見方。


夕食は、いまメダンで一番人気の中華レストランというキャピタル・ビルのTaipanへ。食後のデザートに出てきたドリアン・ケーキがよかった。薄いパンケーキでドリアンの実を一口サイズに包んだもので、ドリアンの食感はそのままで、しかも食べても指にドリアンがべとつかない。シンガポールあたりではやりそうだ(もうはやってるかも)。


夜はホテルでDaaiテレビを見る。ドラマなどの番組のあいまに5分間のツーチーの紹介番組が何度か流れていた。ツーチーがインドネシアで建てた学校で、生徒たちがムスリムと中華の折衷のような服装を着て、音楽にあわせて校庭で太極拳風の踊りを踊っていた。そして最後に合掌。見ようによってはムスリムが仏教のお祈りのしぐさをさせられているのだけれど、インドネシアでは合掌は華人の民族的な挨拶として理解されているような気がする。