ゆかた試着とコスプレ大会

コスプレ上位入賞者たち

メダンの日本文化祭の最終日。餅つき大会、ゆかたの試着・撮影、コスプレ大会など、どれもこの上なく盛り上がっていた。


コスプレ大会では、メイドや日本のアニメのキャラクターの格好をして、午後3時の結果発表までその格好のまま会場をねり歩き、あちこちから写真撮影を求められていた。写真撮影を求められると役になりきってポーズをとっていたのがおもしろい。
コスプレ大会は今年から導入されたイベントだそうだけれど、異様な盛り上がりを見せていた。


ゆかた試着は、メダンでは5年前の日本文化祭で日本人会の発案で試してみたら好評だったため、それ以来続けられているイベントだそうだ。
希望者が殺到し、ゆかたの枚数が限られているために順番がまわってこないのではないかと心配するお客さんと入り口係りのあいだでかなり緊張したやり取りが行われていた。
学生が対象かと思っていたけれど、案内してくれたメダン華人たちがゆかた試着のあたりでどうもそわそわしていると思ったら、自分たちもゆかたを着て写真を撮りたかったということらしい。


会場となった大学キャンパスをうろうろ歩いていると、インドネシア人の学生から「一緒に写真を撮らせてください」と何度も頼まれた。生身の日本人と会った記念の写真だそうだ。ごく普通の格好で歩いているだけだけれどいいんだろうかなどと思いながら写真を撮ってもらった。そうしながら、今では学生が手軽に写真を撮れるようになったんだなあと思う。
私がマレーシアに通いはじめたころ、カメラはまだ高級品だった。フィルムを使っていて、場所やポーズを選びに選んで何枚か撮って現像して、映りがいいものを選んで焼き増して配ったりしていた。自分が写った写真をもらうととても喜んでくれたので、お世話になった人に帰国するときにカメラをあげたいと思ったけれど、電池やフィルムや現像にお金がかかるのでカメラだけあげても使えず、あげるのを断念したこともあった。
今は電子データなので、とにかくたくさん撮って、あとでいらないものを削除すればいい。写真の撮り方もずいぶん変わってきた。(いや、メダンの大学生は金持ちだからでしょ、との声も聞こえてきそうだけれど。)
ゆかた試着とコスプレ大会の盛り上がりをみて思ったのだけれど、インドネシアに行くときおみやげに迷ったら、安いゆかたを1、2着持っていって試着させてあげるととても喜ばれるかもしれない。みんな携帯電話やデジカメがあるので、それぞれゆかた姿を撮影することができる。


カメラが多くの人々の手に届くようになったことで、自分らしさを主張する上で服装などで表現するようになったのかなどと考えてみる。
ゆかたもコスプレも、どちらも人が日常的に着ている様子を目にする機会がない格好だ。日本ではゆかたを着る人もいるけれど、メダンでは日常的にゆかたを着ている人を見ることはまずない。コスプレ大会のアニメのキャラクターは、言うまでもなく日常には存在せず、本やテレビの中にしか存在しない。このように、その衣装を日常的に着ている人がいないという認識があるからこそ、お祭り騒ぎという非日常のときに安心してその格好をすることができるということかもしれない。
そう考えると、陰暦正月というお祭り騒ぎのときに非華人インドネシア人が中国服を着たりするのは、中国服を着ている人が日常的に身のまわりにいないことの、別の言い方をすると、インドネシア華人は中国服を着たりする習慣を失っているということの表われなのかもしれない。だからこそ非華人が安心して中国服を身につけることができるということなのではないだろうか。