ベンクル(スマトラ島)の地震

このところスマトラ島地震が続いている。今日(2月25日)も午後3時半ごろ(日本時間の午後5時半ごろ)にスマトラ島ベンクル州のムコムコ県で地震があった。報道によればシンガポールでも揺れを感じるほどの大きな地震だったらしい。
ベンクル州ムコムコといえば、2007年9月に大きな地震があったところ。
http://homepage2.nifty.com/jams/bengkulu-sumbar.html


今日の地震では、はじめ津波の可能性があると警報が出され、後に解除された。インドネシアのテレビでは画面の下に放送内容と別に1行ニュースが流されるものがある。4時半のニュースでは、キャスターが「津波の可能性があるとの警報は取り消されました」と言い、その下の1行ニュースに「津波の可能性あり」と流れているという一幕があった。


そのニュースではムコムコ県の特派員と電話がつながっていて様子が伝えられていた。津波の恐れはないと地方政府が知らせてまわったけれど、住民は余震を恐れて自宅前や車の中に避難しているらしい。電気は通じているというのでテレビによる情報収集はできているだろう。
キャスターは「津波を恐れて住民が山の方に逃げたりしていませんか」と3回聞いていた。あのあたりは海岸線にほぼ沿う形で幹線道路が通っていて、比較的経済的に余裕がある人たちが幹線道路沿いに家を建てて住んでいるところだ。経済的に余裕がない人たちは海沿いか丘の上のどちらかに住んでいる。幹線道路から離れて丘の上に逃げるということは物流からも情報からも離れるということでしかない。
「自宅前に避難している」と言っていたのは、おそらく幹線道路沿いに住んでいる人たちのことだろう。幹線道路は海岸線に沿う形で走っているといっても、あのあたりの海岸線はほとんどが数メートルから十数メートルの絶壁なので、幹線道路にいる限り津波の心配はあまりしなくていい。
むしろ心配なのは幹線道路沿いでない人たち、特に沿岸部に住んでいる人たちの方だ。去年の地震でも、地震によってそれまでの生活が難しくなると、沿岸部や丘の上の人たちが幹線道路沿いに避難して、そこで幹線道路沿いの人たちと小競り合いになったことがあった。
災害が起こると、災害で壊れたものを直し、失われたものを与え、それでも戻せないときには心のケアを与えるという「直す、戻す」という支援に向かいがちだ。それはそれで大切なことだろうけれど、災害というのはその社会のそれまでの問題点を目に見える形で明らかにする機会でもあるので、ただ被災前に戻すと考えるのではなく、被災前の社会がどのような問題だったかを見極めて、それに働きかけるような支援活動が求められているのではないだろうか。