プラザ・スマンギ

目医者の話の続き。約3時間ごとにさす目薬をいただいた。3時間ごとに目薬をさしていると、目薬をさすたびに「この3時間に自分はこれだけの仕事しかしなかったなあ」と振り返るようになってきた。
ムスリムは1日5回お祈りするけれど、もしかしてお祈りするたびに「さっきのお祈りから今まで何もしなかったなあ」とか思っているのだろうか。


プラザ・スマンギへ。2階に古いジャワのマンガの復刻版を売っている店があったり1階にマレーシアのチキンライスやロティチャナイを出す店があったりといろいろ探検しがいがありそうだけれど、今日は地階の大きなGramediaへ。
Subandono Diposaptono Budiman. Hidup Akrab dengan Gempa dan Tsunami. (Buku Ilmiah Poluper, 2008)
今年1月に出たばかりの津波の本。アチェ津波以来インドネシアでさまざまな津波関連本が出ているけれど、ざっと流し読みしてみたところ、この本がこれまで見た中で一番充実しているという印象を受けた。
5部構成。第1部と第2部は工学的な地震津波の発生やその被害について。図解入りで説明してあり、しかも地図や写真がスマトラ沖地震のものなのでわかりやすい。
第3部は津波に対する地元の人々の知恵の蓄積について。「地震の後に海水が引いたら高台に逃げろ」というスモンの言い伝えや、地震津波でも壊れなかったアチェのモスクなどについて考察している。
第4部はこの本のタイトルと同じ「地震津波と付き合って暮らす」という見出し。警報装置や避難や被災直後の様子などが取り上げられていて、「日本に学べ」という章もある。「稲村の火」もいいけれど、あれだけで終わっちゃうと精神論だけになってしまわないかなあと思っていたら、この本では現在の日本の防災技術をいろいろ紹介している。日本の防災の経験は精神論だけでなく工学的にも学ぶべきものがいろいろあるらしい。
第5部は「インドネシアにおける津波研究」。工学分野を中心に、インドネシア津波研究がどこまで進んでいるか(インドネシアでは津波研究がどこまでできるか)を説明している。さらに設備や資金があればもっと研究が進められます、というアピールに見えないこともない。確かにこの本はとてもよくまとまっており、インドネシアと協力して防災の調査研究をしたい日本人にとっての必読書と言っていいかもしれない。
ただし1つ気になるのは、せっかく地元の知恵を取り上げた第3部や被災直後の様子を取り上げた第4部がありながらも、結局のところ全体の調子では工学的な防災が中心になってしまっているところ。本当にそれで十分なんだろうかという疑問は残ったまま。最先端の装置や制度を現地社会にどう「翻訳」するのかという話とか、インドネシアのような国では防災よりもむしろ災害後の対応にこそ力を入れるべきではないかとか、いくつか漠然と思うことはあるので、機会があればもうちょっとしっかり考えてみたい。