チェスの多面指し

チェスの40面指し

津波から4年目のアチェでは、外国人の姿はかなり減ったけれど、アチェ内外から人々が集まったイベントがいくつも行われていた。
全国の政党が集まってそれぞれ旗を立ててアチェでの陣取り合戦をしていたり、イスラム教団体が説法集会を開いたり、ビジネス専門学校の卒業式でアチェじゅうから卒業生の家族・親戚が集まったりしたイベントがいろいろ見られた。
そんななかで、ちょっとおもしろかったのがチェス大会。アチェの博物館に人が集まっていたのでのぞいてみると、チェスの多面指しをしていた。多面指ししているのはジャカルタから来たウトゥ・アディアントさん。GMのタイトルを持っているインドネシアのトッププレイヤーだそうだ。
対するのはアチェ各地から選抜された40人。GMがぐるっとまわってくる間に自分の手を考えているのだけれど、みんなとても真剣な顔で考え込んでいた。対戦結果は、3時間半でGMの30勝7負3分けで、アチェの人たちもかなりよく戦ったようだ。
勝負がついたと思ったとき、負けた方が手を差し出して握手するというのがおもしろかった。ルールにのっとって戦い、負けた方は負けを認め、勝った方に敬意を表して握手を求めるというカルチャーがちゃんとあるということだ。
アチェの人は一般にとても負けず嫌いだと見られていて、アチェの人たちもそれを認めている部分がかなりある。外の世界から、特にジャワからやってきた人と精一杯戦って負ける、でも研さんを積んだら次に勝てるかもしれない機会が残されている、そういう戦いをたくさん経験するのはよいことかもしれない。