映画「Perempuan punya Cerita」

4人のインドネシア人女性監督によるインドネシア人女性についての4つの物語。インドネシア語のタイトルは「女性の物語」という意味だけれど、英語では「Chants of Lotus」というタイトルがついている。インドネシアの女性が直面しているさまざまな問題を描いた問題提起の映画。


第1話はジャカルタ近郊の島が舞台。冒頭は、スマントリがジャカルタの病院でマンモグラフィー検査を受けて乳癌にかかっていることが知らされるシーン。医者にもっと早く検査すべきだったと言われて「仕事が忙しかったので」と答える彼女は、離島の漁村に住みこんで助産師をしている。この村の男たちは堕胎が罪だと考えていて、母体を守るために堕胎を行ったことがあるスマントリを疎ましく思っている。
ある日、スマントリが世話をしている知的障害をもつ少女ウーランが3人の男に強姦され、妊娠してしまう。スマントリは警察に訴えるが、スマントリが堕胎手術したことがあるため信用できないといって取り合わない。男たちは、騒ぎが大きくなって島の名誉が傷つくことを嫌い、加害者が被害者の親にいくらかの慰謝料を払うという昔ながらの解決方法をとろうとする。スマントリはウーランの母親に慰謝料を受け取らないよう訴えるが、母親はお金を受け取り、男たちは安心して帰っていく。


第2話はジョグジャカルタの高校生たちの物語。インターネットカフェでポルノを見ている男子生徒たちのところに女子生徒たちが怒鳴り込んでくる。女子生徒の代表格のサフィナが友達を妊娠させたのは誰かと問い詰めると、みんなで交替でやったので誰かはわからないとの答え。しかもみんなを誘ったのは彼女と付き合っていた男子生徒。女子生徒もお腹の子の父親が誰だかわかっていない様子。
熟していないパイナップルをすりつぶしてスプライトに混ぜて飲むと堕胎できるというので試してみるけれどうまくいかず、病院に堕胎に行くことにしたけれど怖くて逃げ帰ってしまい、しかたなく結婚することにする。男子生徒たちはくじで誰が結婚するかを決めるが、実は彼女が付き合っていた生徒ではなくグループで一番おとなしい生徒が選ばれるようくじが仕込まれていた。若くして結婚式を挙げる2人。
その一部始終を見ていたジャーナリストのジェイは、ジャカルタに戻り、「ジョグジャの高校のフリーセックス」を記事にして名声をあげる。大学生のふりをして情報収集するためにサフィナの恋心を利用したジェイは、自分が去った後でサフィナが妊娠していたらしいことを知らない。


第3話はジャカルタ近郊の田舎町が舞台。ダンドゥッドの劇場で働いているエシが、ある日、中学生の娘サロが自分の夫?に関係を強要されていたことを知り、サロを守るために家を出る。ダンドゥッドのダンサーであるチチの家に住まわせてもらっていたが、チチの知り合いの男性に「バタム島の高級ホテルで働く仕事がある、高給なのでお母さんに楽をさせてあげられる」とサラに仕事を紹介する。エシは学校を出てからにしろと反対するけれど、ジャカルタに進出したいチチがサロを唆してジャカルタに連れて行ってしまう。
この男は、台湾人男性が東南アジアの少女を買って「妻」にする仲介をしていた。人身売買だったと知ったチチはジャカルタから逃げ帰るが、サロはすでに台湾に嫁いでいた。


第4話はジャカルタに出てきた華人女性ラクスミの話。裕福なプリブミ男性と結婚して小学生の娘ベベが1人いたが、夫は薬物中毒で死んでしまう。夫は薬物注射の常習者でHIVにかかっており、妻も陽性という結果が出た。体調が悪いので漢方薬の店で薬を調合してもらうが、店主は適切な病院で適切な薬をもらうように諭す。HIV陽性であることが夫の両親に知られ、夫の両親にベベを取られないようにと家を出るが、ジャカルタに親戚は1人しかなく、そこでも「AIDSがうつるから」と嫌がられる。安宿を見つけたが、昼間は働きに出なければならず、そのあいだに宿で1人で留守番していたベベが料理しようとして小火を出してしまう。働くこととベベの世話を両立させることはできないと覚悟を決め、夫の両親にベベを託し、行き先のあてもなく夜のバスに乗り続ける。


4つの作品は、問題があったら適切な相談相手に早く相談して問題が大きくならないうちに解決するようにというメッセージを伝えている。もっとも、適切な相談相手が見つからない理由として、夫や役所が彼女たちを守ってくれず、そのため相談相手を自力で見つけなければならないのが難しいところだったりする。
強姦、高校生のフリーセックス、人身売買、薬物中毒などいろいろな問題が扱われている4つの話の共通点をあえて挙げるとすれば、自分の生きた証を次の世代に伝える営みに関連して、自分の責任ではない理由によって望まない選択を強いられる女性たちの話ということになるだろう。もっとも、そのようにまとめることで彼女たちの状況が好転するわけでもないので、これについてはここまで。あとは、インドネシアに関わるなるべく多くの人に観てもらいたいと呼びかけるしかない。