華人関係の本と雑誌

メダンとジャカルタで見つけた華人関係の本。


Wo Ai Ni: Jangan Ekspor Cintaku. (Achi TM, Bukune, 2009.)
24歳の著者の実体験をもとにした若者向けの小説。インドネシア各地から集まった女性たちがジャカルタで3ヶ月間の華語速習コースで学んでいる間の騒動。このコースで学んでいる女性たちは台湾にTKI(海外出稼ぎインドネシア人労働者)として行くことになっており、恋愛劇などを通じて外国で働くことの意味を考えていく。タイトルの最初の3語は言うまでもなく「I Love You」の華語ピンイン表記だけれど、本文はインドネシア語。副題は「愛を国外に持ち出すな」。(「愛」は「恋人」かも。)


Dimsum Terakhir. (Clara Ng, Gramedia, 2006.)
インドネシア華人を題材にした小説。四姉妹は田舎を離れてそれぞれの暮らしを営んでいた。それぞれ暮らしも将来も違えば、忘れられない過去の暗い思い出も違っていた。あるとき、田舎の父親の余命がわずかだとわかり、父親のもとに4人が集まる。タイトルは「最後の点心」。


Peranakan Tionghoa Indonesia: Sebuah Perjalanan Budaya. (Intisari, 2009.)
インドネシアのプラナカン華人についてのピクチャーブック。建築、家具、服装などが中心で、きれいな写真入りの大型本。かなり重い。文芸や出版におけるプラナカン華人の役割についての章もある。


Etnis Cina Perantauan di Aceh. (A. Rani Usman, Yayasan Obor, 2009.)
アチェ(特にバンダアチェ)の華人コミュニティについての研究書。13世紀ごろから現在(2003年ごろまで)の華人コミュニティの状況を丹念に調べたもの。


華人雑誌と言えば「China Town」。ここでも何度か紹介したことがある。
ジャカルタ華人雑誌 Chinatown - ジャカルタ深読み日記
この雑誌を置く本屋もずいぶん増えてきた。
2009年8月号は、表紙に「Nasionalisme Tionghoa Indonesia」(インドネシアの中華ナショナリズム)とある。本文を見ると、西スマトラの蘇文生(Sho Bun Seng)などの例を挙げて、対オランダ独立闘争を戦った人たちの中には華人もいたと強調している。8月17日の独立記念日を迎えるにあたり、自分たち華人インドネシア国民の一員だという思いを確認している。
7月の大統領選挙に関連した記事もいくつかあり、「pemimpin bangsa」(国民指導者)を選ぶと題したものがあった。一般的には「国家指導者」となるだろうところをあえて「国民」(bangsa)の指導者としたのは、自分たち華人が国民扱いされたことへの喜びを表現しているためだろうか。華語の副題では「国家領袖」だった。


「China Town」によく似た「Info Kalimantan」という雑誌を見つけた。月刊誌で、2009年8月号が第21号。
カリマンタンに関する雑誌かと思ったが、表紙タイトルの下に副題が「加里曼丹社会信息刊物」とあり、カリマンタンでも特に華人コミュニティを主要読者層として想定しているようだ。誌面の作りは「China Town」とそっくりだが、編集部の所在地や構成を見る限りは両者の関係はうかがえなかった。
本文によれば、ジャカルタに「Perkumpulan Peduli Rakyat Kalimantan」(略してPerak)というカリマンタン出身者の同郷団体があるらしい。「関照加里曼丹人民協会」という華語名も添えられている。「Info Kalimantan」には60人近くのメンバーが顔写真入りで載せられていて、顔も名前も華人系が多い。
この団体は2007年6月20日ジャカルタおよびその近隣地区に在住のカリマンタン出身者によって設立されたとのことで、設立直後に「Info Kalimantan」が創刊されたということになる。
今月号のメインの情報は北ジャカルタのPenjaringan地区に大きな葬儀場が開業したこと。したがって、これで華人を中心とするカリマンタン出身者がジャカルタで葬儀場とメディアと団体を手に入れたということになる。さらに発展するとカリマンタン華人子弟のための大学とか宗教施設とか、さらには政党へというように進んでいくのがインドネシア的な同郷集団の発展形態なのかなと思ったりする。