インドネシアの災害に関する本

インドネシアで見つけた災害に関する本。昨年9月に西スマトラ地震があったせいか、あるいは「2012年」問題のせいか、災害に関する本が増えていた。


Awas Indonesia Rawan Bencana. (Tim Lembaga Advokasi Bencana, Java Pustaka, 2009)
災害を自然災害と人的エラーによる災害の2つに分け、インドネシアの自然災害と人的エラーによる災害のそれぞれを死者数の順に10件ずつ挙げている。自然災害では、2004年スマトラ沖地震津波(死者数を全体で20万人、インドネシアで15万人としているのはかなり適当に丸めた数字)、1815年のタンボラ山の噴火(9万2000人)、1883年のクラカトア山の噴火(3万6417人)、2006年のジャワ中部地震(6234人)など。
序章では、2004年スマトラ沖地震津波が7時58分に発生したのでコーランの第5章第58節を引いてみたり、2006年のジャワ島中部地震の発生時刻5時55分にあわせてコーランの第5章第55節を引いてみたりとちょっと不思議な話で始まっているが、内容はそのノリで統一されているわけでもなく、災害に関するいろいろな情報を集めて提示したもののようだ。


Feng Shui Prediction: Indonesia Rawan Bencana tahun 2010-2014. (Made Sandiago, Gramedia Pustaka Utama, 2009)
風水でインドネシアの今後5年間を占い、災害の前兆を見極めて事前に防ごうとするもの。著者のMade Sandiagoには「インドネシアの風水師」というキャッチフレーズが付いている。本の前半は風水についての説明と、3×3のマスに1から9までの数字を入れた風水早見表の説明。この風水早見表がさっぱり意味のわからない代物で、本書の後半ではそれをもとにこれから5年のインドネシアの風水と干支ごとの人の運勢を記している。


Buku Pintar Gempa. (Evi Rine Hartuti. Diva Press, 2009)
地震を中心とする自然災害に関する知識を整理した本。地震の発生メカニズム、過去の大きな地震の例、地震後の心的外傷、地震への備え、耐震家屋の建て方、インドネシア国内の災害対応関連部署などがそれぞれ簡単に紹介されている。カタログ的な本で1つ1つの記述は深くないが、これまでインドネシア地震に関する本の多くは地震発生のメカニズムについてのものが多く、せいぜい地震が発生したらどう行動すべきかが添えられている程度だった(それもインドネシア社会ではなく諸外国の事情に基づいたものだった)のに対し、震災後の社会を念頭に置いて、どのようなことが起こり、どのように対応すべきかにページを多く割いた点に特徴がある。


Kisah Tragis nan Pilu di Tanah Gempa. (Purwo S., Mas-Media Alam Semesta, 2009)
2009年の西スマトラ地震を中心に、数十人の被災者の物語を数ページごとにまとめたもの。被災者の物語にはそれぞれ出所として新聞紙等のウェブサイトが示されている。自分たちが書いた記事をまとめて本にしたものかとも思ったが、後半には2008年の中国四川地震の被災者の物語もあり、それに至っては出所が「internet」とだけしか書かれていないものもあるので、どうもインターネットで得られる地震被災者の物語をコピー&ペーストして作った本のような印象を受ける。


2012@Jakarta: Ketika Ramalan Suku Maya Terjadi di Jakarta... (Jacakom e-Learning, 2009)
「2012年のマヤ族の予言がジャカルタで起こったら・・・」というタイトルの薄い本。パソコンソフト「フォトショップ」の使い方を実例付きで示したブックレットで、映画「2012」の事態がジャカルタを襲ったらどうなるかを実例にしたもの。地震津波、そしてなぜか氷河期という3つの災害について、それぞれ実在の街の写真をもとに、どのように加工すればそれらしい被害写真になるかを見せてくれる。付録にDVD付き。
地震ではショッピングモールのタマン・アングレックが崩れる様子を作っていて、タマン・アングレックに恨みでもあるのかと思ってしまう。(いや、恨みなど何もなくて、ただ単に見栄えがするから、自分の持っている技術を使ってみたかっただけなんだろうけれど。)
ジャカルタの街を大津波が襲う写真は、マンダリン・ホテルが見えるのでたぶんタムリン通り。ということは日本大使館津波にのまれる。この写真に重ねる津波はサーフィンの写真で、サーフィンしている人を消す技術なども教えてくれる。
3つめは氷河期。ジャカルタが一面の雪原になり、ジャカルタのシンボルであるMONASの一番上の部分だけ見えている。MONASの頂上は炎の形になっていて、炎が凍りつくということで寒さがよく表れているし、自由の女神が凍りついている様子とよく似ているので終末感も漂う写真になっている。
このブックレットはただ技術力を示すことだけを目的としたもので、災害に備えろとか世直しをしろとかいったメッセージは全くなく、そのノリの明るさをどう受け止めればいいのかやや戸惑う。最近インドネシアでは「2012年」に関する本がたくさん出ていて、それだけ見ると浮足立っているようにも見えるけれど、このブックレットのように、それをネタにして楽しむ段階に来ているということなのかもしれない。