インドネシアの映画関係の本

インドネシアで見つけた映画関係の本。


Kuasa dalam Sinema: Negara, Masyarakat dan Sinema Orde Baru. (Krishna Sen, Penerbit Ombak, 2009)
インドネシアの「新体制」(スハルト体制)期の映画を題材に国家権力と社会の関係を論じた本。もとは1994年に書かれた英語の「Indonesian Cinema: Framing the New Order」で、そのインドネシア語訳。Intan Paramadithaの序論つき。Intanはインドネシアの映画研究で最近博士号をとったばかりのとっても有望な若手だそうで、インドネシアで映画に関心があると言うと何度か紹介された名前。その文章を読むだけでもこの本を手に入れる価値がある。
本文は、1900年以降のインドネシアの映画について、植民地期の映画史や新体制期の映画制作に関わる諸制度を一通りまとめた上で、インドネシア映画に見る権力関係を、軍事体制下における国民言説、階級、男性のフィクションにおける女性像などの観点から分析している。
ところで、本の表紙には著者名のKrishna Senと序文を書いたIntanの名前が書かれているけれど、翻訳者であるWindu Wahyudi Jusufの名前は書かれていない。インドネシアは日本と同じく翻訳が多くて、諸外国で書かれた書物の多くをインドネシア語で読めるようになっているのだけれど、翻訳者の地位はあまり高くないのだろうか。