インドネシア映画『TEN: The Secret Mission』

7月27日劇場公開のインドネシア映画『TEN: The Secret Mission』を観た。特殊部隊の秘密作戦もので、武装して小島に立て籠もった犯行グループから人質を奪還するため訓練を受けた特殊部隊10人が島に潜入して、犯行グループと死闘を繰り広げて人質を解放する。そういう話はたくさんあるけれど、この作品の特徴は、特殊部隊の10人が(そして特訓する鬼教官も)みんな女であること、しかも、鉄壁のガードを破って島に潜入するために10人がグラビアモデルの格好をしてクルーズ船で島に近づくこと。
とりあえずあらすじ。実はこういう映画にも需要があったりして日本で劇場公開される可能性もゼロじゃないかもしれないけど、たぶんその可能性はほぼないと思うので最後の最後まで書いてしまおう。
舞台はインドネシアアメリカ大使の娘が拉致されてインドネシア領の小島に監禁される。犯行グループは島の住民も人質にとって、法外な身代金を要求して、要求に応じないと人質を1人ずつ殺していく。人質救出のために島に向かった部隊のヘリコプターはロケット弾で撃ち落とされ、島は近づけない。
そこで考え付いたのが、一般観光客の格好をした女性特殊部隊員がクルーズ船で島に近づいて油断させて上陸するという作戦。そのために10人の女たちが集められた。
説明によれば、インドネシア政府は特殊部隊員を育てるために世界各地に人を派遣しており、今回はそのなかからシラットやクンフーや空手や合気道や射撃などなどの達人で、見た目がいかにもモデル風の女たちを10人選んだという。大きな十字架のネックレスをしているキリスト教徒や華人風のインドネシア語を話す人などもいて、インドネシアの各層を代表する10人ということでもあるのだろう。
各地から集められた10人が最初にキャプテンから事情説明を受けている場面で、みんなとっても短いショートパンツ姿で、しかもなぜかカメラが彼女たちの後方の低い位置から撮っているので、いやでもお尻がたくさん目に入る。
で、なんで私がアメリカ人を助けるのに協力しなくちゃいけないの、なんて反発する人もいたりして、でもそれぞれ弱みを握られているのと成功報酬が大きいのとでしぶしぶ参加することにする。
島に潜入する前に短期間で10人を特訓するのは鬼軍曹のような女の教官。そのしごき方が半端なくて、朝、みんながまだ宿舎で寝ているところを宿舎の外から銃で撃ちまくる。銃弾は宿舎の壁を破って飛び交い、みんなとっさにベッドの下に隠れるけれど、逃げ遅れて弾を受けて腕を怪我する人もいる。そして訓練の本番が始まると、鉄条網の下を匍匐前進する訓練中の彼女たちに容赦なく銃弾を浴びせたり、あげくには手榴弾らしきものを投げ入れて爆発させたりする。訓練なのに本当に死にそう。
その仕打ちに我慢できずにあの教官を倒してやると挑むけれど逆にやられてしまうとかいうのは軍隊しごき映画でよくある展開。そして島に潜入する。
教官を含めた11人の女性モデルがクルーズ船の上で水着姿でポーズをとって写真を撮りながら島に近づいていく。犯行グループはその様子を双眼鏡で見てにやにやしているだけ。そのうちに島に潜入されてしまい、犯行グループが1人ずつ殺されていく。
そして大使の娘が捉えられている建物へ。実は黒幕は***で、トランプが***でもモンローが***でも***だ、なんていうやり取りがあるけれどそれはたぶんあまり重要ではない。その後は犯行グループの男たちと特殊部隊の女たちが殴り殴られ蹴り蹴られ、刃物で刺し刺されをひたすら続ける。血もたくさん飛び散る。とっても残虐な殺し方の場面が画面処理でぼかされていたけれど、あとはけっこうな場面もノーカット。
死闘の末に犯行グループをすべてやっつけて、ご褒美の勲章をもらった10人の女たちが「民族と国家のために」と言って終わる。

特殊部隊なのに長い髪を風になびかせて敵地に乗り込むのも、上陸して密林の中を進むときもサングラスをかけたままなのも、モデルのふりをして潜入するという作戦だからまあいいのかな。
この映画は死体がたくさん出て、死体が出るたびにハエがぶんぶん飛んでて、それがインドネシア的な死体のリアリティの演出なのかなと思った。
設定はおもしろいかもと思ったけど、空手なりシラットなりのそれぞれの専門が活かされていたように見えなかったのが残念。