ジョグジャカルタの陰暦正月

書道のパフォーマンス

ジャカルタを離れてジョグジャカルタへ。ムリア・プロサニ・ホテルの裏手にあるKetandan Wetan通りで陰暦正月の催しものがあると教えてもらったので行ってみた。


Pekan Budaya Tionghoa “Budaya Rakyat”と題して、路地に露店が並んで縁日状態になっていて、舞台では華人文化がらみの歌や踊りなどいろいろなパフォーマンスが行われていた。
途中で雨が降ってきたけれど、物珍しいのかみんな熱心にパフォーマンスを見ていた。地元の人たちが踊りや歌の日々の練習の成果を発表しているのかと思ったが、なかには民族舞踊を専門にしている人たちのパフォーマンスもあったようで、明日からはソロやスマラン、そしてパダンなどをまわって公演するとか言っていた。


ところで司会者は華人のことを「ティオンホア」と呼び、中国のことを「チャイナ」と呼んでいた。インドネシア華人は「チナ」ではなく「ティオンホア」と呼んでほしいと求めているが、これはチナだと中国と結びついてしまうからだと思っていた。民族は中華系だけれど、中国の国民ではなくインドネシアの国民で、だからチナではなくティオンホアなのだと。もしそうだとすれば、中国のことは堂々と「チナ」と呼ぶべきということになる。
でも、司会者は中国のことをチナではなくチャイナと呼んでいた。もちろん、チナという呼び方はよくないという意識があったためなんだろうけれど、でもそうすると、プリブミたちがインドネシア華人をチナと呼んで嫌ったりしていたのは華人と中国との結びつきを嫌ったためではなく、華人自体が嫌いでそれをチナと呼んでいたということになるのではないかと余計な心配をしてしまった。


どうして中国の話題が出たかというと、パフォーマンスの1つに中国で水墨画の修業をしたという人がいたため。作品が中国で切手の図柄にもなったことがあると紹介され、舞台で書道のパフォーマンスを披露したのだけれど、字は専門外なのかそれとも達筆すぎるのか、かなり微妙な出来だった。そこで司会がすかさず「luar biasa!」とコメント。言葉の上では「並外れている」すなわち「大変すばらしい」という意味の褒め言葉だろうけれど、別の意味も込められているかもしれない。
日本の一部の学会ではしょうもない研究発表を聞かされたときに「大変興味深いご報告をありがとうございました」とまず言う変な習慣があるけれど、それと同じ雰囲気を感じた。評価が難しいものを褒めるときに多用しよう。


縁日の近くには、鉄のゲートの奥に華人の住宅が集まっている路地がいくつかあった。ゲートが開いたままになっていて、縁日や舞台を見に来た人たちが路地を自由に行き来している。ふだん入る機会はないだろうから、ちょっと路地をのぞかせてもらった。
プライベートな空間で、オープンにすると自分たちがどんなことをしているか外の人に丸わかりになる一方、外の人から不要な疑いを抱かれる可能性が減るという利点もある。手の内を明かしあうことで不信感をなくす方に向かおうとしているということだろうか。
Pekan Budaya Tionghoaは今年で3年目らしい。今年は2月7日から11日まで、午後5時から10時まで。