サバを訪れるインドネシア人

モール前で傘を貸す子たち

このところ、日本からのお客さんに会うたびに決まって言われるのが「鳥インフルエンザは大変じゃないですか」という質問。どうやら日本ではインドネシア鳥インフルエンザが大変だという報道がたくさん流れているらしい。
確かに死者が出たりしているので大変と言えば大変なんだろうけれど、ジャカルタで外国人駐在員として日常的に生活している限り、鳥インフルエンザが気になったり話題に上ったりすることはほとんどない。
それよりも今のジャカルタで心配なのは洪水と渋滞だ。昨日あたりから午後3時ごろになると激しい雨が降り出し、ジャカルタのあちこちで2、30センチ程度の冠水ができるようになった。雨はこれから当分続くらしい。
今日の夕方のテレビでは、道路が冠水状態になっていても政府が対策を取らないことに業を煮やした大学生数人が路上で水泳大会を開催したというニュースが流れていた。茶色い川のようになった道路を車が通っていく脇で大学生たちが泳ぐ格好をしている。気持ちはわからなくはないけれど、衛生的によろしくないのではないかと気になる。


ということで、このところ大雨なのであまり町を出歩けずにいる。
今日の雑誌は『Venue』第8号。扱われているのは、車、IT関連製品、食事、旅行などなど。読者の購買欲を煽るための雑誌だろうか。ジャカルタのモールの特集なので買ってみたが、小特集でマレーシアのサバ観光が取り上げられていた。
2008年はサバ観光年だ。この記事でも、サバの「深い海と高い山」を目指そう、と呼びかけている。サバは確かに海あり山ありで、動植物も豊かでエコツーリズムにいいのはその通りなんだけれど、でもサバの最大の魅力はやっぱりそこに住んでいる人々だろうと思う。
サバはマレーシアの中でもインドネシア出身者が多いことで知られている。正規に滞在している人もいるけれど、不法に滞在している人もたくさんいるし、そのうちに(インドネシア人でいながら)どうにかしてマレーシア人になってしまった人もたくさんいる。サバは、国民国家の制度を導入してはいるものの、よくも悪くも国家の境界が溶け出して近隣諸国と混じりあっているようなところだ。そのせいもあってか、よその世界からサバに飛び込んでいっても、サバの人々は暖かく迎え入れてくれる。
サバでは非合法で入国・滞在しているインドネシア人たちをどう扱うかで頭を悩ませ続けているけれど、そんなサバが一部のインドネシア人にとって観光の対象になっているというのが、皮肉というか、なんとも不思議な気持ちになる。
ところでこの記事の中で、サバ州のことをインドネシア語で「Negara bagian Sabah」と書いている。同じマレー語を使っていても、マレーシアでは国がnegara、その部分である州がnegeriなので、サバ州は「Negeri Sabah」となる。これがインドネシアだと「Negara bagian Sabah」となるらしい。Bagianは「部分」だから、そのまま日本語にすれば「部分国」ということになる。
インドネシアではアメリカやインドについてもnegara bagianを使うようなので、negara bagianとは連邦国家の州を指すのだろう。1950年代のインドネシアではインドネシアイスラム国家の樹立を掲げて中央政府に反乱を起こした地域が複数あり、各地域がインドネシアイスラム国家のnegara bagianという位置づけだったという話を思い出した。