インドネシア発のイスラム教映画

このところ映画がインドネシアの話題を集めている。


1つはオランダ人が制作してインターネットで配信して、イスラム教に対する冒涜だと批判されているもの。ただし、新聞などでは盛り上がっているものの、みんなまだ内容を見ていないからか、身近なところではそれほど話題に上っていない。


もう1つは、しばらく前からここでも何度か書いているインドネシア映画『アヤアヤ・チンタ』(Ayat-Ayat Cinta)。
インドネシア人ムスリムの結婚 - ジャカルタ深読み日記
何日か前に大統領と副大統領がそれぞれ夫婦で映画館でこの映画を観たらしく、私はそのニュースをテレビで見て、これでますます全国レベルの社会現象になってきたなあと興味深く思っていたのだけれど、インドネシア人の知人たちは冷ややかに見ているようだった。「一国の政治指導者が一般の映画館に映画を観に行くとは何ごとか、見たければDVDを取り寄せて自宅で見ればいいだろう」と言う人もいて、映画館に映画を観に行くことに対するイメージの違いにちょっと驚いた。でも、そう思っている人たちも映画館に動員させることができたということなんだろう。観客動員数は340万人に達したらしい。


ユドヨノ大統領の思惑は、イスラム教関連の映画をたくさん作ってイスラム諸国に売り出すことにあるようだ。国民を海外に出稼ぎに行かせて「外貨獲得の英雄」なんて持ち上げていると思ったら、映画があたれば今度はそれを外国に売り出そうなんてなんとも安易だと思う。でもその一方で、インドネシアやマレーシアなど東南アジアのムスリム諸国がイスラム教映画を作って、それが中東など他のイスラム地域に広まっていくことは、イスラム教やムスリムの多様な現実が世の中に広まるきっかけになるかもしれず、その意味でも大いに歓迎すべきかもしれない。


ところで、どうしても気になるのが、本当にインドネシア人は『アヤアヤ・チンタ』の物語に納得しているのかということ。表向きは「インドネシア人女性の美徳」「宗教に根ざした自己犠牲」などときれいな言葉ばかり出てくるけれど、でも本当にそうなのかと思って、街でCD屋に入るたびに女性店員に声をかけて、『アヤアヤ・チンタ』のマリアとアイシャのどっちが好きか尋ねてみた。質問者の意図を読む人たちなので、どう見ても非ムスリムの外国人が尋ねているからということもあったのかもしれないけれど、私が尋ねた限りは「アイシャよりマリアの方が好き」と答える人が多かったのでちょっと安心した。


日本人観客の感想を知りたいと思って探してみたけれどまだあまり多くない。
http://tg.cocolog-nifty.com/diary/2008/03/hantu_ambulance.html
ミュージシャンのFEDIも来月か: インドネシア音楽はTIDAK APA2
なぜかすでにDVDも出まわっているようなので、いずれ感想も出てくるだろうと期待。


追記.
その後見つけた日本人の感想。「ファハリの身から出た錆」「振り回されて傷ついた女性が気の毒」とファハリに厳しい。やっぱりそうだよな・・・。
じゃかるた日和 - 2008年3月22日の記事一覧