「マリと子犬の物語」

山古志村に行ったご縁で映画「マリと子犬の物語」を観た。
2004年10月の中越地震の被災地となった旧山古志村で、全村避難のため、飼っていたマリと3匹の子犬を村に置き去りにして避難しなければならなかった彩ちゃん一家とマリたちの物語。物語は途中でちょっと現実離れした部分もあるけれど、震災の様子を描いた映画なのでリアリティを追究したら観られなくなる人が出てしまうのでしかたないのだろう。彩ちゃん役の佐々木麻緒ちゃんとマリ役の「いち」の天才的な演技を見るだけでも観る価値がある。
この物語ではマリが家族と再会を果たしたけれど、中越地震で避難するときにペットを連れて行けず、家に戻ったときに悲しい対面をせざるを得なかった人たちもいたらしい。震災後の小千谷発のブログ記事をまとめた『小千谷から:新潟県中越大震災から2年半 被災地で暮らす主婦の記録』(おぢやのおやぢママ、アスペクト、2007年)にもそんな話が出てくる。


中越地震に関する本。
新潟県中越地震:新潟の大地 災害と生活』(高濱信行編著、新潟日報事業社、2006年)
新潟大学の災害研究者たちによる中越地震の総合的な研究。災害と被害に対する工学的アプローチと被災社会に対する歴史学的アプローチを組み合わせ、個別の被災経験を紹介することで全体像を提示している。
中越地震 復興公論』(新潟日報社編、新潟日報社、2006年)
阪神大震災では国の税収がどんと落ち込んだ。中越地震は国の財政にほとんど響かなかったけれど、それなりの支援をした」「これだけ(支援を)やったのに、まだ足りないんですか」と霞が関で言われた話から始まる。住宅は個人の財産で、その復興に国の金を使えば前例になってしまい、将来首都圏で大地震が起ったら対応できなくなるという霞が関側の論理が紹介される。中越地震で住宅再建のために被災者が得られた公的資金は、全壊した家屋でも平均して住宅再建費用の8%程度だったという。
『復興へ 中越地震』(新潟日報社編、新潟日報社、2006年)
上の『中越地震 復興公論』が行政のレベルでの復興のあり方を巡る議論であるのに対して、『復興へ 中越地震』は被災した人びとが村でそれぞれの被災から復興に向けてどのように対応してきたかを紹介したもの。
『帰ろう山古志へ』(よしたー山古志、新潟日報事業社、2006年)
山古志村の5地区92人が執筆した体験記。仮設住宅での生活のなかで、全国の支援者に感謝しつつ、早く山古志村に帰りたいと書いている。