ヤスミン監督シンポ&上映会

ヤスミン・アフマド監督が亡くなって2年になる。東京では「ヤスミンの世界−ヤスミン・アフマド監督レトロスペクティヴ」がある。
ヤスミンの世界-ヤスミン・アフマド監督レトロスペクティヴ 7/16(土)からユーロスペースで開催します!|ニュース|コミュニティシネマセンター
タレンタイムに始まりタレンタイムに終わる。「優しさの遺産」。


さて、京都では、各方面のご協力のおかげで、オーキッドことシャリファ・アマニ(以下敬称略)を迎えてシンポジウム&上映会を開くことになった。詳細は下のリンク先で。
http://malaysia.movie.coocan.jp/event.html#yasmin2011

シャリファ・アマニは、改めて言うまでもないが、『細い目』にはじまるオーキッドの物語でオーキッドを演じてヤスミン作品に欠かせない存在となった女優だ。ヤスミン監督の次回作となるはずだった『ワスレナグサ』では、オーキッドの母親イノムの少女時代の役で出演する予定だった。その後、シャリファ・アマニは映画や舞台やテレビに出演する一方で、自らが監督する作品『サンカル』を撮った。
『サンカル』は「HerStory」プロジェクトの5つの作品の1つ。「HerStory」というのは、「history」(歴史)は常に「his-story」つまり「男たちの物語」だったという考えのもと、「女たちの物語」を描こうとするもので、マレーシアの女性監督や女優がそれぞれ監督する5つの短編を製作したもの。タレンタイムの母親役の女優さんの監督作品もある。
http://www.herstorymalaysia.com/
この5作品のうちシャリファ・アマニが監督したのが『サンカル』(Sangkar)という作品。シャリファ・アマニ演じるヤスミンという女性とその家族や友達が描かれている作品だけれど、なぜか私のまわりでは男性と女性で物語の受け取り方が違う。7月のシンポジウムで観られるようにと日本語字幕を入れていて、マレーシア社会に馴染みがない人が観てもわかるように部分的に意訳したりしているのだけれど、それで意味が通じるかまわりの人たちに観てもらったところ、男性と女性で物語の捉え方がはっきりと分かれてしまう。「History」と「Herstory」なんてただの言葉遊びかと思っていたけれど、けっこう意味がある違いだったりするのかも。それはともかく、『サンカル』は事前情報を手に入れないでまず1回観てもらうのがよいと思うので、内容に関わることはここでは書かない。
そのかわりに役者について少し。シャリファ・アマニの妹たち(『ムクシン』のヤスミンと『ムアラフ』のロハナ)がシャリファ・アマニ演じるヤスミンの学校の友だちとして登場する。そしてヤスミンの母親を演じているのはシャリファ・アマニたちの実際のお母さん。彼女たちのお父さんは直接は出てこないけれど、劇中でヤスミンの名前がヤスミン・ラシドとなっており、シャリファ・アマニたちのお父さんの名前であるラシドが出てくる。
ヤスミンの友人のお父さん役は、ペトロナス社の2005年の独立記念日のテレビCMで子どもたちに「歩みは後ろ向きではなく前向きに」と教えている義足のおじさん。
http://www.aleph-one.com.my/webcast/petronas_ads/archive.htm
登場人物ではないが、エンディングの「Hapus」という歌は、Bedroom Sanctuaryの「I Can't Draw, So I Sing」というアルバムの1曲。


このシンポジウムは、「HerStoryプロジェクト」の作品の1つである『サンカル』を観て女性の目から見たマレーシア社会について考えるという目的があるが、それとともに、シャリファ・アマニと杉野希妃(こちらも敬称略)の2人が舞台に並ぶ貴重な機会でもある。
この2人は、ヤスミン監督の次回作だった『ワスレナグサ』で共演するはずだった。残念ながら共演はかなわず、その後はそれぞれ女優としてキャリアを重ねるとともに、どちらも映画製作にも携わるようになったという共通点を持っている。杉野希妃はプロデューサーとして『歓待』や『マジック&ロス』などの作品をプロデュースし、シャリファ・アマニは監督として『サンカル』を撮った。女優から映画製作者へと歩みを進めていった2人に、ヤスミン監督の影響などを聞いてみたい。
(なお、シャリファ・アマニは今回の来日で東京に行く予定はない。京都でのシンポジウム以外では関西の映画館でトークショーがあるかも。)


ヤスミン監督と言えば、マレーシア映画文化研究会で作っているマレーシア映画ブックレットの次号はヤスミン(3)の『ムアラフ』『ラブン』の号。7月半ばにはできる予定なので、うまくいけば7月末の都内の関連イベントで置かせてもらえるかも。そうでなければ京都のシンポジウムの会場で。