インドネシアのイスラム恋愛映画「Surga yang tak dirindukan 2」

ガルーダ・インドネシアの機内上映でインドネシア映画の「Surga yang tak dirindukan 2」を観た。
2015年に公開された話題作の続編。人気作品の続編が失速するという話はよくあるけれど、これは例外。
続編だけれど、1作目を観ていなくても全く問題ない。もしかしたら、1作目を観ずに続編から観た方がよいかも。
タイトルの意味は「どこにあるかわざわざ探す必要がない天国」ということで、「いつも天国とともに」という感じか。


最近のインドネシア映画のジャンルの1つにイスラム恋愛映画がある。それをジャンルとして確立したのは2008年に大人気となった「アヤアヤ・チンタ」(Ayat-Ayat Cinta)。そのハヌン・ブラマンチョ監督の最新作で、当然これもイスラム恋愛映画。
「アヤアヤ・チンタ」は、前回ジャカルタに長期滞在したときに観て、その結末にとても驚いて、会う人に「アヤアヤ・チンタ」の結末をどう思うかと尋ねたものだった。今回のジャカルタ滞在も、また会う人に結末をどう思うか尋ねたくなる作品に出迎えられるとは。


結末の直前まで、少々の脱線をしながらあらすじを紹介しよう。


イスラム社会に関する本を書いて売れっ子作家になったアリニ。ヨーロッパ在住のインドネシア人社会に招かれて、幼い娘ナディアを連れてハンガリーに行くことに。空港で出発を待っている。
見送りに間に合わないと空港に車を飛ばす夫プラス。途中で事故に遭った車を見かける。そのまま空港に向かうか、停まって助けるか。善人のプラスは困っている人を見捨てることができない。
搭乗直前に電話をとるアリニ。「いま病院にいる。途中で事故に遭った車を見つけたんだ」「・・・乗ってたのは女の人?」「そう」「その人は妊娠してた?」「いや」。このやりとりで、プラスは以前も事故に遭った車を見つけて乗っていた人を助けたことがあって、その人が妊娠していたために何かあったのだろうと想像させる。これは1作目の話で、その具体的な内容を知らなくてもこの作品を理解する上でまったく問題ないけれど、実は密接につながっている。


ハンガリーに着いたアリニはメイに再会する。メイは幼い息子アクバルと2人暮らし。後からハンガリーに飛んできたプラスが合流すると、アクバルはプラスを父親と呼び、プラスは居心地が悪そう。


講演や観光をしているアリニが倒れて病院に運び込まれる。癌が脳まで転移していて、治療しなければ残りの日はほとんどない。しかしアリニは治療を拒否して、家族にも伝えないようにと医師シャリフに頼む。
(ところがそれを娘のナディアが聞いていて、アリニもナディアもお互いのことを気遣って直接言わないけれど、でもお互いのことを大切に思っている気持ちを伝えたくて、人形劇をしてお互いの気持ちを確かめている場面は泣かせる。)


メイは小さな店を構えて経済的に自立して生活している。そんなメイに惚れ込んで、君の過去に何があっても関係ない、これから一緒に過ごしたいと求婚するシャリフ。メイはその気持ちをありがたく受け止めるが、過去のことで決着をつけなければならないことがあるのでそれが済んでから、と答える。メイは離婚証明書を用意する。


アリニは、生死は神様が決めることなので受け入れる、ただし幼いナディアには母親が必要だからと、プラスにメイと一緒に暮らすよう求める。愛する妻はアリニだけだと思い、メイと正式に離婚しようと準備していたプラスは戸惑う。


アリニが自分の病気のことを隠していたためにプラスもメイも戸惑うが、アリニが倒れてシャリフが来ることでプラスもメイも(そしてメイから話を聞いていたシャリフも)事情を理解する。病院に運ばれたアリニの最後の望みで、プラス、メイ、ナディアとベッドのアリニが一緒に礼拝する。アリニは礼拝が終わると意識がなくなり、礼拝を見守っていたシャリフが蘇生させようと努力するが、帰らぬ人となった。


最後の場面に行くまでにここまでのまとめ。
メイとプラスは何らかの事情で過去に法律上の夫婦だったけれど、今ではどちらも実際に夫婦関係にあると思っていない。プラスはアリニだけが妻だと思い、メイはシャリフとの結婚を真剣に考えており、プラスとメイはお互いに正式に離婚したいと思っている。ところが自分の余命が短いと知ったアリニは、娘のためにプラスとメイに実際の夫婦になってもらいたいという望みを遺して亡くなった。


最後の場面。海が見える見晴らしのよい崖に結婚式の会場が設置されており、参列客が揃っている。入場してきた花嫁はメイ。壇上で花嫁を待っているのはプラスとシャリフの2人。

(画像:http://goo.gl/Sykqgw
シャリフを演じるのは、実に多彩な役を演じている人気俳優のレザ・ラハディアン。プラスを演じるのは、「アヤアヤ・チンタ」で優柔不断な善人で自分は何も決めずに2人の女性と結婚することになったファハリを演じたフェディ・ヌリル。メイは誰と結婚するのか。


自分なりにこんな結末の可能性があるかなと思っていたものがみごとに外れた。