研究

大学院選びで金より大切なもの

はじめにお断り。特定の大学・大学院やゼミを貶めたり称えたりするつもりではなく、一般論。また、文系・理系の違いや学問分野によっては以下の話が当てはまらないことも当然ある。ここで私が念頭に置いているのは地域研究。 最近、大学院の入試説明会で、受…

地域研究者は自分の社会の問題にどう関わりうるか

被災から約2週間を迎えるこの時期、被災地やその近隣地域でまだ緊急段階におかれている被災者の方々がたくさんいるなかで復興の話を始めるのはどうかという考えもあるかもしれないが、早い時期から復興の方向を考えるのは必要なことだ。 直接の被害を受けた…

数えられないものを受け止める工夫を

研究者たち、特に防災や災害対応に直接かかわりがなかった人文社会系の研究者たちのあいだで、研究者としても市民としても何ができるかを考えている。それとも関連して、研究者が集まっている大学ではどのようなことを考えているのか。知り合いを通じて、そ…

ヤスミン・アフマドの世界(2)

先月のことになるが、マレーシア映画文化ブックレットの「ヤスミン・アフマドの世界」の第2弾を刊行した。 http://malaysia.movie.coocan.jp/publication.html 今回の対象は『細い目』『グブラ』『ムクシン』の3つ。『細い目』は中華関係の参照が多いのでそ…

ようやく年明け気分

ようやく年が明けた気になってきた。といっても春節のことではないし、正月のことでもない。自分の中で2009年度が明けて、2010年度にようやく追いついてきたという気になってきた。 この1年、締め切りに追われ続けてきた。英語の発表があると準備に時間が取…

ドキュメンタリー制作と研究

スマトラの噴火については引き続き状況を見守るとして、少し前になるが土曜日のアテネフランセ文化センターでのヤスミン・アフマド特集の対談のことを少し。対談で石坂健治さんがうまくまとめていたけれど、ヤスミン作品は、香港映画やクラシック音楽などの…

国際会議で英語を使うこと

インドネシアの国際会議に参加する機会があった。日本人とインドネシア人の研究者がこれまで1年半かけて行ってきた共同研究プロジェクトの成果を英語で発表し、その内容を検討するというもの。 3日間の日程の最後のセッションで会議のまとめが行われた。代表…

場を区切らない人々

今日はとてもつまらない話。つまらないので思い出したくもないが、現実に起こったことだし、忘れるべきでもないとも思う。もう2、3日すると今の気持ちを忘れてしまうだろうから、まとまりはないけれど、忘れる前に書いておく。できるだけ一般的な書き方を…

「英語圏で通用する論文」

タイトルだけ見て期待して飛んできた人には悪いのではじめに断わっておくと、この記事を読めば「英語圏で通用する論文」が書けるようになる、という話では全くない。最後の方に論文の書き方みたいなものが出てくるけれど、私自身は「そうじゃないだろ」とい…

学会の時間

週末に行われた学会に参加した。私がのぞいたパネルでは、フロアからの質問者の何人かが鋭い質問を投げかけていた。その鋭さには「この話題ならどうして自分に声がかからないのか」という無言の主張が感じられた、というと深読みが過ぎるかもしれないけれど…

「ロロ・ジョングランの歌声」

「ロロ・ジョングランの歌声」(松村美香、ダイヤモンド社、2009年)を読んだ。 ジャワ中部地震の取材で現地を訪れた女性記者が、7年前に東ティモールの独立紛争で取材中に殺された従兄の死の背景を少しずつ知っていく。 ミステリーには、読み終わった後でも…

映画「感染列島」

帰りの機内で観た。物語としては、主人公が持ち場を離れてあちこち出かけすぎじゃないかと思うけれど、それはそれとして考えるところがあった。 総合病院が正体不明の感染症の感染現場になり、WHOからメディカルオフィサーが派遣されてくる。感染経路を特定…

ウルトラマンとマレーシアとぼくらの地域研究

佐藤健志の新刊『夢見られた近代』を読んでいる。相変わらずの解釈の切れ味を味わう一方で、かつてのように議論に圧倒される気持ちはなくなった。私にとって佐藤健志は、結論の方向はまるで異なる方向に進んだが、考え方や書き方の方法は強く影響を受けてい…

「定説を覆す努力を」

この時期は学会が毎週末のように続く。学会に出て感じたことを2つ。互いに違う話だけれど、「建設的な論争」ができないという点で共通している。 今回参加した学会で特に目立ったのは、あるシニア研究者の頑迷さだった。自分の学説と違う学説に基づいた研究…

地域研究は世の中に役立つか

世の中、地域研究がはやりらしい。国内の学問の世界では、誰も彼もが地域研究と言うようになった感がある。私も地域研究の業界に属しているので、地域研究の売り出しのために動員されることもある。あの手この手で地域研究を売り出そうとしている人たちにと…

マレーシアのニューメディア

マレーシアの学会などで聞いた話の続き。 いくつか興味深い話題が複数のパネルで議論されていた。1つは女性の結婚について。マレーシアで結婚しない女性が増えているらしい。他方でというか同時にというか、未婚の母親になっている人も増えているらしく、そ…

忙しい年度末に読む本

ジャカルタでの滞在も残り1ヶ月を切った。仕事を早めに切り上げて最後の1ヶ月は遊んで暮らそうと思っていたが、年度末はとても忙しい。処理する先から次の案件が飛び込んでくる。しかも、そんなときに限って来客が多い。来るにはそれだけの理由がある。1人1…

英語社会シンガポール

週末、滞在許可などの都合で隣の島に行ってきた。5年ぶりぐらいに学生時代の友人に会った。 彼女は両親とも日本人だけれど、小さいころからヨーロッパで育ち、高校か大学のときに日本に移ってきた。東南アジア研究を志して日本の大学院に進んだけれど、日本…

インドネシアとマレーシア

ラスカル・ワタニヤ改めアスカル・ワタニヤについてコンパス紙にコメントを寄せていた政治学者のIkrar氏を訪ねた。ちょうど日本からインドネシア政治学者が訪ねて来ていて、日本とインドネシアの2人の政治学者から話を聞く機会となった。 ラスカル・ワタニヤ…

ジョグジャカルタの防災情報拠点

ジャカルタに戻ってきたけれど、書き残したジョグジャカルタの話をもう少し。 東南アジア学会の支援活動の話は前に書いたけれど、それとは別の東南アジア研究者がバントゥル県に防災情報拠点を作っているというので訪問した。この防災情報拠点に基本的に常駐…

学問の都ジョグジャカルタ

ジョグジャカルタ市内にタマン・ピンタルといういかにもな名前の文教複合施設のようなものがある。本屋が集まっていると聞いて行ってみた。確かに本屋が集まっていたが、それだけではなかった。学問の都と呼ばれるジョグジャカルタの底力を垣間見たような気…

ガジャマダ大学

ガジャマダ大学へ。日本で知り合いになったインドネシア人留学生がものすごく日本語が上手で、ガジャマダ大学の日本語学科出身だと言っていたので興味を持ってのぞいてみた。 夕方雨が降ったのでタイミング悪く教員は帰ってしまっていたけれど、図書室司書の…

読売文学賞

今日は空港に行く用事があり、道が冠水で通れなかったらどうしようと思って恐々出発したけれど、まったく問題なく高速道路を通って空港まで行けた。昼ごろで道がすいていたせいもあり、スナヤンの高速ゲートから空港まで飛ばして30分。途中、数日前に冠水し…

映画「危険な年」

昨日の夜中から明け方にかけて雷と大雨だったのでどうなることかと思っていたが、ジャカルタ南部の我が家の周辺は特に洪水など大きな問題は発生していない様子。空港から市内まで夕方タクシーで来た人の話を聞いた。高速道路は冠水して通れないので一般道を…