Malaysia

マレーシアで見つけた本

台風で飛行機が飛ばないらしく、空港で足止めを食う。「Talentime」のサントラCDを聞きながら書きもの。今回マレーシアで見つけた本をメモ。 Map of the Invisible World (Tash Aw, Harper Collins, 2009) 我が友人の今期イチオシの小説。買ってすぐ日本に送…

「1マレーシア」とカダザンドゥスン人

マレーシア映画祭では「伝説」の映画俳優や歌手たちに会う機会があったが、それとほぼ同じ日程で別の「伝説」の有名人たちが勢ぞろいする機会があった。 有名人と言ってもサバ以外ではほとんど名前が知られていないだろうが、ヘルマン・ルピンが「カダザンド…

ヤスミン・アフマドを継ぐもの――「Sayang: You Can Dance」

サバ在住のご夫妻にマレーシア映画祭期間中の上映映画のチケットをいただき、マレーシア映画「Sayang: You Can Dance」へ。ポスターを見る限りではシャリファ・アマニが変なおかっぱ頭をしているダンス映画だというので半分怖々のぞいてみたが、ヤスミン作品…

1マレーシア映画「Jomlah C.I.U.M.」

そういう括りがあるわけではないが、「1マレーシア映画」とまとめてしまいたくなるような映画を最近立て続けに観た。「Jomlah C.I.U.M.」と「Setem」。 「Jomlah C.I.U.M.」は、多宗教社会マレーシアを描いたと一部で話題になった「Pensil」の監督による作…

1ボルネオで1マレーシア

昨日からマレーシア映画祭。22年目にしてはじめて半島部を出てサバへ。 午後はコタキナバル市内のセンターポイントで「伝説のスターに会おう」セッション。1950年代や60年代の映画で活躍した伝説の俳優や歌手が30人近く集まったのは壮観。もう40年も経ってい…

マレーシアで見つけた本

透視308(紀伝財、Seashore、2009) 308とはマレーシアの総選挙で与党連合・国民戦線(BN)が大きく後退した2008年3月8日のこと。マレーシア社会のいろいろな分野での308の意味や影響についてのエッセイを集めて華語訳したもの。サバ、サラワク、ペナンなど…

ヤスミン監督

ヤスミン監督の話をもう少し。 クアラルンプールで映画つながりの友人と再会。SS24でカニを食べながらヤスミン作品などについて議論。 マレーシアではヤスミン監督を惜しむ声がよく聞かれるけれど、どれもCMの監督としてであって、長編映画はちゃんと観た人…

ヤスミン作品と「翻訳可能性」

クアラルンプールでは「タレンタイム」のDVDはまだ売られていなかったが、「タレンタイム」のサウンドトラックCDを見つけた。ハフィズやメルーがタレンタイムで歌った歌が収録されている。しかも、それぞれの歌が英語とマレー語で収録されている。これを聴い…

ヤスミン監督の肖像画

ヤスミン監督が亡くなってから1週間が過ぎているが、マレーシアの新聞紙上では英語紙を中心にヤスミン監督の業績をたたえ、早すぎた死を惜しむコラムが何件も書かれている。改めてヤスミン監督の影響力の大きさを知るとともに、コラムの1つに「人は生きてい…

ヤスミン監督の追悼番組

マレーシアへ。夜9時からTV3でヤスミン追悼番組が放映されていた。番組の冒頭ではヤスミン監督の職場のデスクが映された。「そのままにしておいて」と書かれたメモがパソコンの前に置かれ、そのため主人を失った今もパソコンがつけっ放しになっていた。 追悼…

ヤスミン・アフマド監督

マレーシアの映画監督ヤスミン・アフマドが亡くなった。 7月25日は前から計画していたマレーシア映画の研究会の第1回だった。初回はやはりこれしかないということでヤスミン・アフマド監督の「細い目」(Sepet)を取り上げた。マレーシアに関心がある人たち…

奇岩、ツバメ、映画――マレーシアの観光新名所イポー

日本の観光ガイドではほとんど「錫鉱山跡と洞窟だけの地方都市」としか紹介されていないけれど、観光地としてもっと積極的に紹介すればいいと思うので、そのアイデアをいくつか。るるぶやまっぷるなどの関係者はぜひ検討を。「マレーシア映画の新潮流を訪ね…

「月について」――ムスリム、月へ行く

「月について」(Tentang Bulan)は、今が旬のマレーシア映画だ。その理由は後で書くとして、まずはストーリー紹介から。結末も含めて全部紹介してしまおう。 空港に降り立つマレー人女性。高価そうな服やハンドバッグを身につけており、いかにも都会で成功…

「相撲ら!」――「戦わない日本人」が出ているマレー映画

女性に見とれて車にぶつかるのはマレーシアの笑いの王道だ。どれだったか忘れたけれど、P.ラムリーの映画だったかでも見かけた記憶がある。ほかにも動物の臓器移植だとか、「相撲ら!」はマレーシア人の笑いのツボをよく押さえている。マレーシアの劇場だっ…

「ゴールと口紅」――女々しく勝つ

都会のマレー人と言えば、マレーシア映画「ゴールと口紅」(Gol & Gincu)は何度観てもおもしろい。爽快で、観ると元気になる。活躍しているのは都会の女の子ばかりで、ときどき顔を出す男の子はどれもぱっとしないのだけれど、男が観ても楽しめる。 まずは…

「ラブン」――都会暮らしに慣れたマレー人

ヤスミン・アフマド監督が「細い目」の前に作ったマレーシア映画「ラブン」。 マレー語で田舎のことを「カンポン」という。マレー人はカンポンが大好きだ。ハリラヤ・プアサ(断食月明け)の連休には「民族大移動」と呼ばれるほどの帰省ラッシュになるし、都…

「鳥屋」――寝ても醒めても中国人

マレーシア映画「鳥屋」(The Bird House)は、画面の切り取り方がおもしろいし、しかもとても色鮮やかなので、古都マラッカの伝統的な家屋の様子を覗き見るためだけでもこの映画を観る価値は大いにある。ただし、ここではいつものように私の関心に沿って物…

「レイン・ドッグ」――現実から積み上げる「もう1つのマレーシア」

ホー・ユーハン監督の「レイン・ドッグ」(太陽雨/Rain Dogs)は、美しい風景と音楽のなかに身が包まれるだけでも観て得した気分になるのだけれど、ここでは映画の内容の紹介をかねて思ったことを少々。 ホー監督は、ヤスミン監督と志を共有する(けれども…

「霧−Sanctuary」――救済としての老人ホーム

マレーシア映画「霧−Sanctuary」は、いろいろな説明が映画の中で明確に語られず、どことなく掴みどころがない。どこか1つに焦点を当てて捉えようとすると全体が崩れてしまう感じがする。全体の印象を大づかみにすれば、マレー人夫婦の老後を描いた「ラブン」…

「後ろを見てはいけない」――イスラム化しても怖いものは怖い

マレーシア映画「後ろを見てはいけない」(Jangan Pandang Belakang)がマレーシア映画の興行成績の歴代1位になったという。ホラー映画はあまり好みの分野ではないけれど、そういうことなら避けて通るわけには行かないだろう。ということでさっそく観てみた…

「最後のマレー人女性」――「マレー人性なら東海岸」の積極的な否定

マレーシア映画「最後のマレー人女性」(Perempuan Melayu Terakhir)は、西洋風の生活様式を身につけたマレー人男性と、イスラム教条主義によってマレー人の慣習さえ否定しようとするマレー人男性とを対比して描くことを通じて、マレー人とは何かという問い…

「マンデー・モーニング・グローリー」――「テロリズム」に至る道

マレーシア映画「マンデー・モーニング・グローリー」(Monday Morning Glory)の舞台は東南アジアの某国。ナイトクラブで199人の死者を出した爆弾事件の実行犯たちを逮捕した警察は、国内外のメディアや人権団体を招き、実行犯たちが拠点とする村で犯行に至…

「グッバイ・ボーイズ」――試験社会マレーシアの歩き方

マレーシア映画「グッバイ・ボーイズ」(Goodbye Boys)を観た。あの「ゴールと口紅」(Gol dan Gincu)の監督の作品。 マレーシアの地方都市イポーの高校で学ぶ17歳の少年8人。ボーイスカウトの訓練の一環で、「キングスカウト」の称号を得るため、5日間か…

「ムクシン」――創作と現実の境界を溶かす試み

「ムクシン」では、オーキッドとジェイソンの恋の行方のほかにも、「細い目」や「グブラ」で未解決だった謎がいくつか解かれている。 たとえば、ムクシン少年はオーキッドに友達のしるしとして「ずっと髪の毛を切らないで」とお願いする。そういえば、「細い…

「ムクシン」――オーキッドとジェイソンの恋の行方

「ムクシン」(Mukhsin)では、「細い目」と「グブラ」に続くヤスミン・アフマド監督のオーキッド・シリーズの続編として、前作までに謎が解かれなかったオーキッドたちの物語にどう決着がつけられたかがまず気になってしまう。最大の謎はオーキッドとジェイ…

「グブラ」――オーキッドと「もう1つの物語」、2つの「逆転」

「細い目」は「現実には存在しないマレーシア」を美しく描いた映画で、その中心にいるのが、現実のマレーシアにあるさまざまな関係を「逆転」させているオーキッドだ。では、「細い目」の続編である「グブラ」でオーキッドの「逆転」はどうなったのか。 「細…

「細い目」「グブラ」――現実にないマレーシアを美しく描く

ヤスミン・アフマド監督による「細い目」(Sepet)は日本でもかなり評判になった。私もこの映画がとても好きだ。 ところで、この映画について「マレーシアの多民族社会のリアリティを描いた」という評価を何度か目にした。そう言いたい気持ちはわからなくも…

ムスリム・ヒーローとしてのチチャマン

観れば明らかだが、「チチャマン」のテーマの1つは「コピーではなくオリジナルを」だ。 そうはいっても、「チチャマン」自体が「スパイダーマン」のコピーじゃないかという人もいるだろう。もちろん、「チチャマン」のアイデアは、「スパイダーマン」や他の…

「チチャマン」――新世紀のムスリム・ヒーロー映画

マレーシアでは2006年、ヒーロー映画「チチャマン」(Cicak-man)が大人気だった。壁をよじ登る特殊な力を持ったヒーローが悪者と戦う物語で、「スパイダーマン」を思い出させるけれど、マレーシアではどの家でも壁や天井にへばりついていたりするチチャ(ヤ…

マレーシアで買った本

引き続きマレーシアの補欠選挙後の動きとTALEnTIMEの評価をウォッチ。 補欠選挙後に新首相の新内閣が発表された。マレー人政党の青年部長が落とされてかわりにマハティールの息子が入閣したほか、サバから多数の入閣があったことが目立った。 TALEnTIMEにつ…